Burundi”by Kandukuru Nagarjun is licensed under CC BY 2.0

現在窮乏、将来有望

ブルンジとの出会いは、京都の木屋町の小学校跡地にできたブルーボトルコーヒー。真夏のコロナ禍、水出しコーヒーをオーダーすると、驚くほどの美味、水出しということもあり、まるで花のような華やかな香りが、それを特別なアイスコーヒーにしていた、産地を確認するとブルンジ。

とても美味しいコーヒーを飲んだとコーヒー通の京都の悪友に教えると、あんさん焙煎機屋の社長の割には、ブルーボトルなんかで満足してるんでっか、と私の興奮に水をさす。ブルーボトルのマジック、オシャレな雰囲気に呑まれたのではないか、と。翌日、念のために飲みに行くと、その感動は昨日のまま、ブルンジのコーヒーの特別な魅力に触れた気がした。

ブルンジ…ルワンダとかコンゴあたり、治安がとんでもなく悪そうなアフリカの真ん中…ぐらいの印象だったが、ちょっと気になる国になる。

のち、YouTubeなどでブルンジの特集を見ると、当初の印象はおよそ当たっていた。

広大なアフリカには55の国があり、最も豊かとされる国はナイジェリア、一方ブルンジは国土も狭く、北海道の1/3ほど。隣国のルワンダやコンゴといった国と同じくツチ族とフツ族の紛争、虐殺、難民、それらによる貧困、と悲しい連鎖を経て、今は世界的にも最貧国のひとつ、アフリカはおろか世界中で2番目に貧しいとされる記事も。一人当たりGDPはアフリカで最下位。

YouTubeのドキュメンタリーで映るブルンジの人は、仕事もお金もなく生活が大変と嘆く、ドキュメンタリーチームはその彼の家に行くと、洞穴の中みたいな暗い家。そこで家族全員が食べていくのに精一杯だと。

しかし、その家族が出てきたとき驚いた。奥様は1人、その子供の数は9人、計10名。確かにものすごく厳しい暮らしぶりとは思うが、大家族。人口増加率は世界トップ10、2020年のデータでは7位。

もちろんそららには隣国からの難民の流入や、地雷や医療の不足で手足無くした人なども多いなど、現在の問題は山積み。

しかし、よく日本や韓国などは経済的に厳しいから少子化に歯止めがかからないなどとニュースで言うが、世界最貧とされるブルンジの状況はどうだろうか。ものすごく貧しくても、子供も、人口も増えている。そしてそこに映る人々には笑顔があった。

ANAの創業者が創業期に言ったとされるキャッチコピーを思いだす。

現在窮乏、将来有望。

そこには将来の夢、情熱、希望がある気がする。そんな最も外貨を稼ぐ第一位の産業はコーヒー。高く売れるスペシャルティコーヒーのクオリティも年々あがり、今やブルーボトルコーヒーのメニューにもあがる。

思えば、コーヒーは不思議な飲み物だ。ノルウェー、フィンランド、ドイツ、デンマーク、一人当たりに飲む量が多い北欧、日本、韓国などをはじめ、主な消費国はとても豊かな国々である。しかしそこの人口は緩やかに減り続け、治安は良いのに、自殺率が高い。コーヒーによる癒しが必要なのがわかる。

もしかしたら人類は豊かになりすぎると、特に希望が見つけられなくなったり、時に死にたくなったり、時にあまり子供を産みたくなくなる方もいるのかもしれない。そして、複雑な味の飲み物も好きになる。

真夏に飲んだ、花のような香りのコーヒーを思い出す。ブルンジ、名もしれない国から来たコーヒーには、今日より明日の方がきっとよくなる、家族みんなで生き残る。貧しくとも、そんな希望、情熱、祈りが詰まっていた気がする。敗戦後の私たちがかつて得て、失ったものすべて。
 



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