コーヒー好きなら、一度は口にしたい隠れ王者。
それがボリビア。
コーヒー専門店で「何かオススメは?」と聞くと、店員さんが「個性的なのがお好きですか?」なんて聞き返してくることがある。そんな時には、「ボリビア」と答えたらどうだろう。ブラジルやコロンビアほどありきたりじゃなく、パプアニューギニアほど尖りすぎてもいない。ちょうどいい「知ってる感」を出せる、きっと通なチョイスだ。
そう、ボリビアのコーヒーは、知る人ぞ知る存在。南米のコーヒー大国に囲まれながらも、ひっそりと独自の輝きを放つ。生産量は多くない。いや、むしろ少ない。でも、その分、丁寧に育てられた豆が揃う。標高1,200~2,000メートルのアンデス山脈の斜面、豊かな土壌と冷涼な気候が、ボリビアコーヒーに深いコクと繊細な酸味を与えている。ここは、急峻な山道と熱帯雨林に囲まれた、まさに秘境とも呼べる場所だ。
実はボリビア、コーヒーの歴史は意外と長い。19世紀にヨーロッパからの移民が持ち込み、以来、大量生産ではなく、小規模農家が中心となって栽培を続けてきた。その品質は近年、スペシャルティコーヒーの世界でも注目され始めている。人口の多くを占める先住民族アイマラやケチュアの人々が、山の斜面で豆を育て、収穫し、手作業で選別する。その風景は、まるでコーヒーの原風景そのものだ。
首都ラパスは、標高3,600メートルと世界一高い場所にある大都市。ここから少し下った場所でコーヒーが育つなんて、ちょっと不思議な感じもするだろう。気候は温暖で安定し、アンデスのミネラル豊富な土壌が、ボリビアの豆に独特の甘みとフローラルな香りを吹き込む。飲めば分かる、そのバランスの良さ。派手さはない。でも、じんわりと心に残る。
ボリビアのコーヒーについて、コーヒーフリークなら知っておきたいもう一つの顔、それは「ティピカ種」や「カツアイ種」といった伝統的な品種が、今なお大切に守られていること。トレンドに流されず、昔ながらの味を追求する姿勢は、どこか頑固で愛らしい。隠れた名産地、ボリビア。静かに、でも確実に、コーヒー好きの心をつかんで離さない存在だ。
Africa
Asia
America