AGE of NOVO

MYANMER G1 SHAN ESTATE PINDAYA
WASHED ANAEROBIC
ORANGE SUNSHINE

ミャンマー G1 シャン州 ピンダヤ村 ウォッシュド アナエロビック オレンジサンシャイン [PDF]

8年ぐらい前だろうか、「ミャンマーに投資しませんか?」とよく言われた。
そんな人の顔はボンヤリしていて、
ウシジマくんか、なにわ金融道に出てくる人みたいに見えた。

そのおでこには、もうはっきりと「詐欺師」と書いてあるようにも見えたので、投資することはなかった。しかし、今の NFT、仮想通貨、SDGs などのように、ちょっとしたバズワードの先には新しい、まだ法整備が十分にされていないマーケットに向けての期待があり、そこに群がる人たちの熱狂が垣間見えた。




ただ私は「バズってるもの」には基本スルーだ、もちろんそれらが全部バブルだと決めつけるほど保守的ではない。しかし、すでにみなが噂しているものに、いまから群がったところで、もう手遅れではないだろうか。

話が逸れた。ともあれ、ミャンマーがかつてビルマと言われ、中井貴一の出世作「ビルマの竪琴」一択のイメージの国から脱却して、ものすごいダイナミズムで成長していることは感じた。そして、21 世紀は間違いなく、アジアの時代になるということも。アウンサンスーチー氏により急速に民主化し、急成長している国には、どさくさに紛れて巨万の富をえようと怪しい人だけでなく、いろんな人やお金も動く、東南アジアの民主的な国としてタイインドネシアヴェトナムなどのグループの次のユートピアと目されていたのではないだろうか。

それはコーヒーの世界でも同じ。アメリカのスペシャルティコーヒーの専門家のチームが民主化されてきたアジアのニューフロンティアに目をつけ、様々な知見やお金を投資したことを契機に、アジアでは、先述のタイやヴェトナムをもしのぐ、インドネシアに次ぐぐらいのクオリティのコーヒー産地として台頭してきた。

私たちの長い生豆パートナー、この AGE of NOVO シリーズの紹介文ではすっかりおなじみ、生豆商社の日本珈琲貿易も早くからミャンマーに目をつけられ、「ミャンマー星山」という締め技が売りのプロレスラーのような名前のスペシャルティコーヒーを 8 年ほど前にリリース、これが少しミカンのような淡い優しい味がして、私共でも早速採用させていただき、NOVO オーナー様の間でもとても好評となった。

「ミャンマーのコーヒー?って最初は思ったけど、飲んでみたら本当に美味しいね。」

そんな声を頂戴しながら、私たちでも今なお長く、もはや定番のラインナップとして取り扱いをさせていただいている。
それから少し経ったころ、主にアジアの生豆を取り扱われている、私たちダイイチデンシと同じ京都の「坂ノ途中」というユニークな社名の会社さんからミャンマーのコーヒー豆の売り込みをいただいた。

代表の小野さんとは古い知り合い、「100 年先も続く、農業を」と素晴らしいコンセプトで、創業時は日本で野菜の事業に注力されていたが、アジアのコーヒー産地にも目を向けられて、現地の会社とも連携されることで面白い珈琲産地や農家さんを見い出し、その珈琲生豆を輸入するビジネスを始められた。

アジアのコーヒーは私たちも常に注目しており、弊社も坂ノ途中さんから、中国の雲南、タイのチェンライなどといったアイテムを通年ラインナップとしてお取り扱いさせていただいている。が、なかなか採用しなかった産地がある、それがミャンマーであった。

当時の担当の Y さんはミャンマーにも足しげく運ばれて、長くその魅力を弊社にも売り込みいただいていた。ただ、弊社ラインナップにはすでに前述の「ミャンマー星山」があるので、同じ国の似たようなアイテムは出しづらいところ。
しかし、ついに降参する時が来た。

ミャンマーのシャン州にある、ジーニアスコーヒーという現地のコーヒーの会社と組み、生産指導を強化されて、毎年のように進化したそれは、まるでオレンジのように、そして太陽の光のように眩しい鮮やかな香り、華やかな印象がして、味にコクがあるミャンマー星山とはまた異なる趣き。

そんな、より華やかな香り・味わいを出すために、ジーニアスコーヒーでは鮮やかな赤い実だけを収穫するなど、現地の小農家さんへの細かな教育に力を注がれている。

「RUBY 色の赤い実だけをとりましょう、それが、きっとあなたたちの RUBY になるよ」
上手いこと言う。良いものだけをとってくれたら、ちゃんとその価値を支払いますよと、そうしてモチベーションをあげていただくことで、品質を高めていますというのはジーニアスコーヒーの代表トゥンさん。

RUBY 色に完熟したものは実を強く掴むと一滴から二滴の果汁が出る、それらを実演し、さらには糖度計で計測し、記録し、そのロットごとを管理、と細かいマネージメントをされて、毎年のトライアンドエラーが進化を促している。中南米ではそんな管理が進んだ農園もチラホラあるが、アジアではまだ珍しい。

そんなジーニアスコーヒーさんの生産管理されている中でも特に丁寧に作られているからと、なかなかウンと言わない弊社にとっておきなロットをと、エリア指定されたピンダヤ村という村のマイクロロットを弊社だけにとご提案いただいた。

そのピンダヤ村はまだまだポテンシャルもあり、アナエロビック精製にするなど、今後より弊社だけのオリジナル仕様でも作っていただけるという。

まさに、完璧なご提案。「いや、やっぱいい」と、毎年ゆっくりと左右に振り慣れていたわたしの首は、上下に高速に頷いた。ここまで素晴らしい提案とそれにみあったサンプルをいただいたなら、釘でも飲みこむかもしれない。
そしてそのオリジナルアイテムの名前は、香りと味の印象そのままに、「オレンジサンシャイン」とした。

そして、20-21 シーズンに販売されたそのアイテムは無事に人気アイテムとなり、次年度 21-22 シーズンからの分はより大量に、そして、よりオレンジ味を出すべく、約束通りアナエロビックの精製方法を採用いただいた。空気に触れさせずに、少し発酵を進ませることで、よりフルーティーになる、人気の精製方法である。

こちらはウォッシュドの精製のためナチュラルのときほど強烈な印象はないが、その分、よりクリアなオレンジ味になるだろう。今後が楽しみ。

そんなタイミングで、2021 年ミャンマーに政変が起きた。民主化の波は暗転し、軍事政権が政権を支配し、アウンサンスーチー氏は再び拘束された。それらに反対して、民主化運動する人たちは今も暴力にさらされ、たくさんの人が捕まり、殺されたりしている。

軍事政権は歴史的にも、民主的な力をもちそうな、そんな教育をされた企業家たちにも厳しい。最先端のコーヒーを作る、ジーニアスコーヒーでも民主化のために何かよからぬことを企んでいるのではと、政権にマークされて、重要な各農家さんへの生産指導の要となるポストの人間が連れて行かれてしまい、まだ戻られないそうだ。そして、ジーニアスコーヒーの代表も、同じように逮捕されるかもと今は国外に、ミャンマーには戻れず、遠隔で経営や生産指導をされている。

「でも、御社のオリジナルのコーヒーはなんとか確保できました」

2022 年夏、そんな激動のミャンマーにも行き、現地から戻られた坂ノ途中の Y さんは言われる。しかし数は 25 袋のみ、希望数の半分以下にとどまった。しかし、その味は抜群。新しく挑戦したアナエロビックもうまくいき、申し分ない。

90%が小農家で、収穫から乾燥まで。そして自分の土地、森の中で育てる。コーヒーだけでなく、ジャックフルーツやなんやらを 20 種類ぐらい。また、働く人の 90%が女性という。東南アジアにはそんな国が多いが、ここミャンマーも女性がものすごく働く国として有名だ。

古いタイプの男たちがいがみあって殺し合っているうちにも、私たちが寄り添って、価値のある、生きていくための商品を生み出さないといけない、そんな覚悟が詰まっている気がした。

先行きはまだ見えない。今後に向けて、難しいかもしれないが、毎年もう少しずつ数量をいただけるようにお取引できないだろうか。坂ノ途中さんにお願いをすると、ご快諾いただいた。そして、より加速して、今回から弊社オリジナルの麻袋で、AGE of NOVO シリーズでいきましょう、と話がまとまった。

AGE of NOVO のコンセプトは独特の美味しいコーヒーを、互いに無理のない関係で、長く続けることだということはよくご理解をいただいている。坂ノ途中さんの「100 年続く、農業を」というコンセプトとも相性は抜群。軍事政権がピリピリしている中、今年も現地まで行かれている勇気にも脱帽だ。

その名前も、そのままオレンジサンシャイン。陽の当たる場所で笑いながら収穫を祝うような、そんな希望が詰まった名前にしたい。
オリジナルアイテムの割に 25 袋だけでは、そのうち売り切れてしまうだろう、しかし、一緒に、長く育てていただくつもりで、是非今はご容赦をいただきたい。

「今は数が少なくても、次の年にはもっと出せるように頑張ります」

2022年、SCAJ の会場で会ったジーニアスコーヒーのトゥンさんの言葉にも希望、いやそんな願いが詰まっていた。今はつらくても、明日はきっと良くなる、ミャンマーはそんな希望がある国だと。

国を追われるというのはどんな気持ちだろう。
平和ボケした私には想像つかない。

しかし、きっといつか故郷に帰ることを信じて、スペシャルティコーヒーと向き合って、
活動されているに違いない。彼らの願いが叶うときがくることを私たちも長く見守りたい。

BLOOD ではない、
RUBY 色に輝く農園を、彼が祖国で再び見られる日を信じて。



文:中小路通(ダイイチデンシ Inc)
取材・写真ご協力:山本様(株式会社坂ノ途中)
トゥン様(ジーニアスコーヒー)

生産地:ミャンマー シャン州 ピンダヤ村
生産者:ピンダヤ村の10世帯(リーダー:トンコーさん)
精 製:ウォッシュド、アナエロビック
標 高:1,500ー1,600m
品 種:カツーラ、カツアイ、カティモール、S795、ティピカ
規 格:G1  / サイズ:16UP
乾 燥:天日乾燥、アフリカンベッド
栽 培:シェードグロウン
農 薬:栽培期間中農薬科学肥料不使用


ミャンマー G1 シャン州 ピンダヤ村 ウォッシュド アナエロビック オレンジサンシャイン [PDF]




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