「最近、ウチの会⾧、YouTuberになったんすよ」

マライカバザール金沢店、 同チェーン13台目となるNOVOを搬入している時に
スタッフの方に教えていただいた。


会⾧とは、
マライカという全国60店舗以上のエスニック雑貨界のモンスター企業、
株式会社タカラトレーディングの創業者、怡土(イト)会⾧のことである。

もう60歳は超えておられる筈だが、年齢不詳、
そして常人にはない、パイオニア的なセンスを持たれている。





最近になりまた社⾧も兼任された。
現役バリバリの最先端。

そらYouTuberぐらいにはなるだろう、と
出会って5年の私は思う。

その本社は東京、八王子。京王堀之内駅スグ。
思えば、初めて本社にお邪魔した印象は強烈だった。





私はインドに行って人生が変わったこともない。
要するに、エスニック雑貨店にあまり免疫がない。
エスニック料理を、まさにかじった程度。


たどりついたのは、本社前。



ちょっと怪しげな門構えだなぁと思いながら中に入ると、 薄暗い通路横に、
黒いマジックペンで大きく「人間」と書かれた段ボールが、 うず高く、所狭しと、並べられていた。

人間人間人間人間人間人間人間人間。

エスニック業界を舐めくさって、
この門前でこと切れた様々な勇者、いや愚者たちの
様々な人間のパーツが小分けされ、入っているのではないか… まさか。


心拍数あがりながら、
エレベーターに乗り、食堂の隣のオーナー室に通されると、
そこにはちょっと朴訥とした雰囲気の、⾧身の男性。
焙煎機のお問い合わせをいただいた、怡土会⾧だ。

おっとりと話をされながらも、
ポーカーフェイスで、話の先は読めない。


「今度の新店は、ここの北」

「埼玉の入間ってところでね。ちょっと大きな店」

「で、カフェもやろうと思って。それで、これ。」

それで、これ。
焙煎機を買っていただけるということのようだ。
慌てて、契約にまつわるお話をさせていただいた。


怡土さんはそれほど多くを、ご説明されない。

「あー、あの人間って段ボールは、
 入間(いるま)のことか… ビビったぁ。。」



京王線に揺られて一安心。
そして、一台売れたことに、ひと満足。
だから、その帰り道には、まだよくわかっていなかった。

その入間店で導入いただいたのを皮切りに、
新たにハワイアンカフェを店内に併設した
新しいタイプのお店の開店ラッシュ。

5 年後の今では、その新店の16店舗に
NOVO MARKⅡをご導入いただくことになることを。


おかげさまでその後、堀之内には何度も足を運ぶことになった。
そして、全国様々な地域の新店舗へ。

入間、盛岡、深谷、越谷、大宮、木更津、旭川、佐賀、
つくば、相模原、平塚、枚方、奈良、金沢、前橋、幕張。





新しい業態のお店は「MALAIKA BAZAAR」という名前。
様々な国の本格的な雑貨、アイテムが所せましと並ぶフロアに弊社の焙煎機は、
店舗内のハワイアンカフェ「RAINBOW CAFE」の
常設アイテムとして、各店舗に導入いただいた。





そしてもちろんカフェの店頭では、
弊社から仕入れられた生豆も含む、世界中の生豆が並び、
店頭で焙煎したてのコーヒー豆を、販売されている。





雑貨を見ているうちに10分ちょっとで、焼きたてをお届け。


世界中のホットな雑貨を届けられている、
マライカさんのブランドコンセプトともうまくマッチされている、
雑貨屋さんのカフェは多くあるだろうが、その中でも新しい挑戦だ。


詳しい店舗レポートはこちら


女性はエスニック雑貨のお店が好きなイメージだが、
男性は「どうせ、でっかいスプーンとか、タジン鍋とかそんなんやろ」
ぐらいにしか思っていない方も多いのではないだろうか。


私もその一人であった。




しかし、行くうちに、エスニック雑貨の魅力が少しずつわかってきた。
誰にも心に刺さる一品がある。


そこには多様な世界の、生活を楽しむための知恵と文化があり、
それらを選べるという、幸せがつまっている。


新しいMALAIKA BAZAARは大きな店なので、
品揃え豊富、生活に根ざしながら、新しいものも多い。
それらは、決して各国の観光地にある、よくある土産物屋のようなものはない。





怡土さんは元々、青年海外協力隊でケニアに派遣されたご経験があり、
そこで得られたケニアの雑貨ルートをもとに、
帰国後、路上でエスニック雑貨店をはじめられた。


MALAIKA(マライカ)とは、スワヒリ語で「天使」。
天使の市場(バザール)とは素晴らしいネーミングだ。


そして商品の企画から輸入・販売、店舗内装まで
全てを自社で行っておられるのが強み。
それが31 年目の今年は、全国60店舗ほどに拡大。

まさにエスニック雑貨界の巨人である。

その巨人が何故、弊社の焙煎機を気に入っていただき、
新しい業態のカフェのマストアイテムとして導入いただいたのだろう?

5年も経ち、今更ではあるが、
導入店様のご紹介の一環とかこつけ、
怡土会⾧に取材し、 少しインタビューする機会を得た。





「怡土さんは、マーケティングとか、されるのですか?」

数多くのヒットと、時にはホームランを飛ばされている秘訣をお聞きしたいと、
まずはそんな質問を。

「しないしない、意味ないからね」

簡潔。マーケティングしても意味ない、
というのはその筋のコンサル殺し、バッサリ。
しかし、予想通りのお答えでもあった。

というのも怡土さんが、会議室でスタッフさんやコンサルの報告を受けながら、
「これ売れてるんだ、へぇぇ」というお姿は想像できない。

「なんか変なのを、また会⾧が見つけてきた」

むしろスタッフさんからはそんな声ばかり聞く。

たぶん、弊社の焙煎機も最初はスタッフさんにそう思われていただろう。





最近では、弊社の姉妹品のカカオ焙煎機の仕様を
特別にマライカさん仕様に特注改造させていただき、
カカオの焙煎も始められた。





たぶん、その時も同じように思われたに違いない。
カカオ豆からチョコ作るって、またいつものが始まった。

怡土さんは、そんなイノベーター的な魅力にあふれる人だ。

これは面白い!というものを、
どこからともなく、見つけられ、気づけば商品化されている。
他社が稟議を回しているうちには、もう店頭に並んでいるだろう。


今でも大きな買い物、
面白いプロジェクトとなる商品や設備は、会⾧自ら選ばれている。
そこに弊社の焙煎機も入れていただいたのは光栄というほかない。


「今の大きな挑戦はなんですか?」

「やっぱり、ショッピングモールでは限界出てきたから、
 郊外に新しい店をオープンして、移していることかなぁ。」

「限界なんですか?かなり売れているところも多いと思いますよ」

「今よくても、そのうちダメになるよ。(きっぱり)
 それに、モールの家賃もあがるから。」

相変わらず、簡潔だ。
先を見据えて、常に動かれ、
現在、リブランディングの真っ最中なのだろう。



思えば、5年前は、
弊社の焙煎機はまだイノベーターしか反応しない、
そんな代物であった。

イノベーターは2.5%しかいないという有名な「イノベーター理論」がある。
イノベーターとは、これは新しい面白い!と、
出たての iPhone や、3D プリンターなどを真っ先に買うようなひとたち。

そしてアーリーアダプターという、その次ぐらいに反応が早いひとたち。
その数は 13.5%。

本当に新しい革命的な商品は、一部の熱狂ファンの16%には歓迎されるが、
最初は、そんな数しか売れないのである。
残り 84%の人は、なんなのそれ状態。

次のアーリーマジョリティ(34%)と呼ばれる、
ちょいミーハーな人に伝わるまで、ブームにはならない。
これは辛抱になる。

おそらくマライカさんは、
オーナーがイノベーターなので、
いきなり爆発的ヒットというよりも、
5 年後にブレイクするものを仕込まれている。




もちろん、マライカバザールに来られるお客さんの層も
イノベーター寄りなので、最初からまずまずは売れるが、
ブレイクには少しかかる、エッジの多いものが多いだろう。

オーナーさんがイノベーターだと、そこまで我慢できるが、
これが出来ないオーナー、或いはスポンサーだと、 打ち切ってしまうことがよくある。

コンビニによく出てくる新作の商品。
民放テレビの番組。
主に東京に出来てはなくなる新しい飲食店。

いや、そもそも今の日本のマーケティングというのは、
すでにブレイクの兆しがでている安パイなものが多い気がする。

だから、収穫期が短く、刈り取ったら、はいすぐ次!という
スピード感を感じてしまう。
酷いときは、ブレイクしたものの二番煎じ。

しかし、怡土さんはもっと先の未来を見られている。




「良くてボチボチで、たまにいいことがある、
 それぐらいの感じで、いつも考えているかな」

なんとも達観されている、実は稀代のマーケッターなのかもしれない。

「何か、これは失敗したのってあります?」

「いっぱいある、特にスタッフがいっぱい集まって、
 これはいい、いける!と、頭で考えたものはダメだねぇ。」

ベテラン揃いの、優秀なマライカさんのスタッフさんが聞いたら、
ズゴーッと、脱臼しそうなお言葉だが、 まぁダメなんだったら仕方ない。

怡土さんは言う。

「え、お前、この商品、本当に欲しいの?って聞くと、
  いや、私は要らないですけど、誰かはいると思いますって、
  真顔で言うんだよね」

誰かには、はまりそう。 そんな最大公約数では、多様化するこの現代には、
もしかしたら誰にもはまらないのかもしれない。

「では、最後に、最近一番、嬉しかったことって、あります?」

「そうだね、入間店だね。」

5 年前に、新しい業態を始められた店舗。
人間(にんげん)店ではない。





「開店した時はもちろん人は多かったんだけど、
 まぁそこからは、ちょっとずつ落ち着くじゃない?
 それが、最近また売上が伸びてきてね、ホント調子いいんだよね」

5 年、ついに、時代が追いついてきた。

「それは嬉しいですね!コーヒーも売れてきましたか?」

「そうだね、特に男性客が増えたのはコーヒーのおかげだね。
 本当に、あの開店する時に大反対しまくったウチの連中、
 ほら見てみろ!って感じだよ!」

ポーカーフェイスから一転、とても素敵な笑顔。
一体、どんな大反対を押し切られのか、めちゃ笑ってしまった。

弊社のマシンはやはり、冒険心溢れる人に愛されるようだ。





今までいろんな大手チェーン店の方々も、
見学に来られたが、残念ながら採用はされなかった。

流行りそうな最大公約数を探しにこられた
そんなスタッフさんが多かったのが、大きい。


有名チェーンのオーナー自ら見に来られたのは、
怡土会⾧のマライカバザール、
金井会⾧の無印良品のみ。
どちらも反対されたという。こんなの見たことないですよ、と。

見たことある店を作ってどうするんだ?と、
そう言っていただけるオーナーさんに愛されるのは、本当に光栄だ。



どこにでもあるチェーン店で、
日本が塗りつぶされては、きっとそれはつまらない未来。

マライカバザールがある街のように、
個性的なオーナー、お店、お客様が集まる、そんな日本になるように。

私たちはそんなオーナー様、
そこで働くスタッフの皆様、
お客様をずっと支えさせていただく、そんな会社でありたい。

そして、それはもう叶っている気がする。
年を増すごとに、 素晴らしい会社さんやオーナーさんに恵まれ、
そんな実感は増すばかり。
何より、マライカバザールの新店ラッシュはまだまだ続く。

しかし一方で緊張感もある。

5 年後を見据えた、イノベーターの巨人が、
私たちのことをもうマンネリだと思われないよう、
私たちも日々精進あるのみだ。


「怡土さん、こんなの思いついたんですけど、どうですか?」

「あ、いいですよ。また本社で会いましょう。」


私の八王子通いは、まだまだ続きそうである。



MALAIKA BAZAAR
文責・撮影 中小路通(ダイイチデンシ株式会社)
2019年3月掲載





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