生豆、焙煎、抽出、中でも素材である生豆は、風味の柱となるもの。ブラジルのコーヒーは苦みがどうこう….、コロンビアは酸味のバランスがどうこう… など、一昔前にはさも生産国によって風味が決まっているような言われ方がされている時代もありましたが、コーヒーの風味は産地だけで語れるものではありません。「産地」「品種」「栽培条件」「精製」「選別」この5つが風味に深く関わっています。どの品種が、どのような場所で、どのように栽培され、どう精製され、選別されたかが、風味を分けるポイントになります。

もちろんその先の「焙煎」によっても引き出される風味は変わり、また「抽出」の工程によっても左右されるのですが、全ては素材そのものが持つ個性がどう引き出されたかに過ぎません。こちらでは数あるコーヒーの品種の中から、弊社取扱いの品種を中心にご紹介します。

2020,3/6

COFFEE BEANS VARIETY

コーヒーの原種は、三大原種と言われる、アラビカ種、カネフォラ種、リベリカ種とされています。
そこから枝分かれし、下記の図のように品種の確認がされています。



【原種】


Arabica アラビカ種 
コーヒーの起源。アラビカ種はエチオピアのアビシニア高原が原産のコーヒーの原種で、焙煎してコーヒーとして飲まれるようになったのは、13世紀ごろからだと言われています。耐病性が低く、病気にかかりやすく、栽培の条件的にも気候や風土・土壌が限定されるが、風味が他の2種に比べ豊かな点から、コーヒー豆の生産量の約6割を占めています。クリーンでフローラルな風味と含油率が高く滑らかな口当たりが特徴です。栽培が難しく育てるのに手間がかかることから品種改良も盛んに行われており、その数は100種以上あるとも言われています。アラビカ種の中で品種として分かっているのはティピカやブルボンなどで約5%、残りの約95%は、エチオピアに原生しているHeirroom (へアルーム/エアルーム) と呼ばれる原種のまま(品種交配をせずに固定種のまま)存在し続けている伝統的な品種(総称)で、その解明はまだほとんどされていません。



Canephora(Robust)カネフォラ(ロブスタ)種 
現在、流通しているコーヒーの約4割を占めていると言われているカネフォラ種(ロブスタ種)。アラビカ種に比べ病害虫(サビ病など)に強く、環境に左右されにくいという特徴を持っており、「強靭な」を意味する「Robust」が名前の由来とされています。見た目はぷっくりと丸っこく、独特の「ロブ臭」と呼ばれる焦げた麦のような香りがあり、苦みの原因となるカフェインがアラビカ種よりも約3倍ほど多く、深い苦みが特徴です。アラビカ種よりも生産性は高いのですが風味が劣る為、缶コーヒーや安価なレギュラーコーヒーに混ぜて使われることが多い品種です。ちなみにコスタリカでは、高品質なコーヒー(アラビカ種)のみを生産をする為に、低品質とされているロブスタ種の栽培を、1989年から約30年もの間、世界で唯一、法律で禁止していました。




Liberica リベリカ種 
アフリカのリベリアが原産地。病気の原因要素が増える低地でも育つため基本的には耐病性を持つ種だが、サビ病には弱い。果実の成熟に時間を要し、樹高は10mを超える大木に育つため収穫が困難の為、生産性が低く、アラビカ種やロブスタ種と比べ風味も劣るので、産地で消費される他、研究用途等でヨーロッパに輸出される程度です。原種ながらもほとんど流通しておらず、コーヒー豆の生産量の1%未満とされています。風味はどちらかと言えばアラビカ種よりはロブスタ種寄りで、スッキリはしておらず、アンクリアです。

【品種】 


Typica ティピカ 
典型的な、ティピカルの意味、これぞアラビカ。アラビカ種の中で最も古い品種で、アラビカ種の原種といわれるものの1つ。エチオピア南西部で生まれ、エチオピアからイエメン、インド、インドネシアなどに広がっていったとされています。味わいは上品でクリーン。甘味とさわやかな酸味が特徴の風味が素晴らしい品種ですが、病気に非常に弱く、生産場所も限られ、栽培が難しく、収穫量も少ない為、流通量が極めて少なく、他の品種と混在される事も多いため、単一品種として流通しているものはきわめて少ない状況です。また生産性を上げる為の品種改良も行われており、今では「100%ティピカ」と呼べるものは少なくなってきています。ちなみに、ハイブランドとして有名な、ジャマイカのブルーマウンテン地区で栽培されているブルーマウンテンや、ハワイ島西部のコナ地区で栽培されているハワイコナは、それぞれその地で独自変化をしたティピカの亜種にあたります。




Bourbon ブルボン 
ブラジルではコーヒーの原型とも言われているブルボン種。舌ざわりの良い中にまろやかな甘みとコクがあり幅広い層に人気があります。その誕生は、ティピカの突然変異種とされていますが、ティピカよりもチェリーは丸く、やや小さめです。突然変異は品種改良を行う目的で人口的に行われることが一般的で、自然に生じる確立は低いものですが、ブルボンにおいては自然界で生じたものです。ティピカ種同様、耐病・耐害虫性が低く、さらには2年に1回の隔年収穫の為、生産性も低く、こちらも品種改良が進められており、現在は単一品種での流通が少ない品種です。



Geisha ゲイシャ 
世界で最も高価なコーヒーのひとつ。エチオピア南西部にあるゲシャ村の付近で発見されたところから、ゲイシャと呼ばれています。エチオピアに原生しているエアルーム(ヘアルーム)と呼ばれる長年にわたって代々受け継がれてきた伝統的な品種で、他の伝統品種と比較しても著しく生産量が低い為、栽培する農家が減り、一度は絶滅したかのように扱われてましたが、パナマのエスメラルダ農園によって栽培されたものが、パナマの品評会“ベスト・オブ・パナマ(2004年)”で一躍脚光を浴び、史上最高値を記録。1ポンド(約453g) 21ドル(約2,300円))。その後も年々記録は更新され、2019年にはエリダ農園のゲイシャが1,029ドル(約11万円)という世界最高値がつきました。近年ではパナマ以外の国で育てられたものも注目を集めており、果実感の強いフローラな風味は、飲んだ人を虜にします。




Caturra カトゥーラ(カツーラ) 
ブラジルのミナス・ジェライス州発見されたブルボン種の突然変異種、カトゥーラ(カツーラとも)。ティピカやブルボンに比べると耐病性があり、樹高は低いため栽培しやすいのですが、あくまでアラビカ種の中でのことで、耐病性、耐虫性は決して高いとは言えず、また、ブルボン種と同様2年に1回の隔年収穫のため、流通量としてはそれほど多くはありません。生豆は少し丸みを帯びた形状で少し小粒、風味は柑橘類の酸味と渋みを持っています。中南米、中でも中米の農園で広く栽培されています。



Mundo Novo ムンドノーボ 
ポルトガル語で「新世界」という名のついたムンドノーボは、1943年頃に発見されたブルボン種とティピカ種の交配種です。酸味と甘味のバランスが良く、風味の印象はマイルドです。ブルボン種に比べ、耐害虫性、耐病性があり、生産性が高く、安定して収穫できる点から、ブラジルでは多くの農家が栽培しています。ブラジルで生産されるアラビカの約4割を占めます。余談ですが、NOVO MARKⅡは ノーボマーク2 とは読みません。ノボマーク2です。



Catuai カトゥアイ(カツアイ) 
ブラジルのサンパウロ州の研究所でつくられた、カトゥーラ種とムンドノーボ種の交配種。耐害虫性、耐病性があり、標高が低くても栽培でき、樹高は低いため収穫がし易く、生産性は高めです。実(み)は赤と黄の2種類ができ、黄色い実のカトゥアイが1985年頃にコスタリカに導入され、中米に広まり、グアテマラでは生産されるアラビカの約2割、ホンジュラスでは約半分を占めています。比較的しっかりとした香味が特徴で、他の品種と配合されていることが多い品種です。



Pacas パカス(パーカス) 
1949年頃にエルサルバドル北西部のサンタ・アナ地域にある農園でブルボンの突然変異種が発見され、その農園を所有していたパカス氏にちなみ、名付けられ、他の農園でも栽培されるようになりました。ブルボン種に比べ樹高は低く、低地でも栽培が可能で生産性が高く、標高が高くなればより華やかな風味を持ち、エルサルバドルではコーヒー生産量の25%を占め、国を代表する品種です。



Maragogipe マラゴジッペ(マラゴジ―ぺ,マラゴジぺ)
1870年頃にブラジルのバイア州マラゴジッペで発見されたティピカの突然変異種。樹高があり、葉も実も大きく育つ品種です。大型で手入れがし難いため生産性は低く、栽培する農家は少なめ。ただ「エレファントビーン」と呼ばれるほど大粒な豆からは想像が出来ないほどの繊細な酸味とフルーティな甘みを感じることからファンの多い品種です。



Pacamara パカマラ 
パカス+マラゴジッペ=パカマラ、実は性質もそのままで、パカス種の華やかさと、マラゴジッペ種の粒の大きさがそのまま反映した人工交配種です。1958年頃にエルサルバドルの国立コーヒー研究所で作られました。耐病性は低いが、樹高は低木のパカスと高木のマラゴジッペを足して割った比較的小型な樹高に育ち、栽培効率は高いのが特徴です。カップオブエクセレンスで頻繁に上位入賞するほど、優れた風味を持っています。



SL28 エスエルトゥエンティーエイト 
1935~1939年頃にケニアにある研究所、Scott Agricultural Laboratories(スコット農業研究所)によって栽培された人工複合品種で、研究所の頭文字からSLがつけられました。耐虫性があり、干ばつには強く、比較的低地での栽培にも向いており、長期的な生産が可能ですが、耐病性は低いようです。しっかりとした酸味には余韻もありフルーティさも感じられ、ケニアをはじめアフリカでは広く知られている品種です。日本ではエスエルニジュウハチと呼ばれています。



SL34 エスエルサーティーフォー 
先ほどのSL28と同じくスコット農業研究所で栽培された人工複合品種。SL28もSL34もブルボン種から選抜された数多くの品種の一つとされていましたが、最近の遺伝子検査では、SL34はティピカ遺伝子グループに関連していることが示されています。こちらは耐虫性は低いのですが、耐病性があり、高地での栽培に適しています。風味は爽やかでフルーティな酸味とコクが特徴的で、ケニアでは栽培している農家が多いようです。もちろん日本ではエスエルサンジュウヨンと呼ばれています。



Hibrido de Timor ハイブリッド デ ティモール(チモール ハイブリッド/Timor hybrid)
1920年頃にティモール島(現在:東ティモール)の農地で発見されたアラビカ種とカネフォラ(ロブスタ)種が自然交配した交雑種。本来は染色体の数が異なるため自然には交配しない2種が、突然変異により交配したハイブリッドな品種で、ハイブリッド デ ティモールと呼ばれています。カネフォラの遺伝子により耐病性に優れてはいるものの、風味はアラビカより劣る為、栽培する農家は少なく、アラビカと交配可能が品種であることから研究用として用いられているのがほとんどのようです。



Catimor カティモール(カチモール)
ブルボン種の突然変異種カトゥーラに、耐病性に優れているカネフォラの遺伝子を持つハイブリッド デ ティモールを人工交配させた品種で、1950年代後半にコーヒーの葉さび病の研究で有名なポルトガルの研究所(CIFC)で開発されました。カトゥーラとティモールで、カティモールと名付けられました。耐病性があり、成長が早く収穫量が多いため、生産性が高いのが特徴です。その為、風味よりも生産性を重視した品種として扱われがちですが、きちんと手をかけられたものは風味にしっかりと個性があり、どのように育てるかは農家次第というところのようです。



Kent ケント 
1920年頃にインドのカルナタカ州にある都市マイソールにあるケント農園で発見されたティピカと多品種の交雑種。耐病性があり生産性が高く、インドをはじめ、ケニアやタンザニア等で広く栽培されています。タンザニア(ブゴバ地区を除く)で生産された水洗式のアラビカ種を指すブランド「キリマンジャロ」にも多く含まれている品種です。大雑把に言えばキリマンジャロっぽいやつです。



Ruiru 11 ルイルイレブン 
1985年頃にケニアのルイルにあるコーヒー研究所によって多くの品種で作られた人工複合品種で、ハイブリッド デ ティモール、ブルボン、SL28、SL34、ルメスダン等、色々な遺伝子が含まれているそうです。耐病性があり、生産性が高く、風味はマイルドでバランスが良いのが特徴です。なぜかここ日本でもルイルイレブンと呼ばれ、ルイルジュウイチとは呼ばれていません。



San Ramon サンラモン
1930年代にコスタリカ アラフエラ州カントン地区 サン・ラモンで発見されたティピカの突然変異種。ティピカ種を受け継いだまろやかな甘味を伴った酸味、柑橘系の香味が特徴的で評価は高いのですが、矮小な木で生産性が低く、希少性が高いものとなっています。




Java ジャバ(ジャワ) 
19世紀初頭にオランダ人によってエチオピアから直接インドネシアのジャワ島にティピカ系品種が持ち込まれ、そこで栽培され、根付いたものがジャバと呼ばれるようになりました。耐病性があり、細長く大きな豆で、豊かな香味と酸味が少ないのが特徴です。



Javanica ジャバニカ 
インドネシアのジャワ島で栽培されているジャバがニカラグアへと渡り、栽培されて根付き、独特な風味を持った点から、独自の品種としてジャバニカと呼ばれるようになりました。マイルドでバランスの良い風味を持ち、その豆の見た目は細長く大きいのが特徴です。



Amarelo アマレロ 
ブルボン種の変異種で、通常赤く熟す実が黄色く熟すこの種に、ポルトガル語で黄色の意味を持つアマレロと名付けられました。樹高は低く、耐虫性もあることから、生産性が高く、ブルボン種特有のやや小さめの豆からは、甘味とコクに加え豊かな酸味も感じられ、高い評価を受けている品種です。そのままイエローブルボンとも呼ばれてもいます。


コーヒーの品種はほとんどが解明がされておらず、現時点でも品種の解明、研究は、世界の至る所で行われています。その為、一昔前の資料ではティピカとブルボンが同列に記載されているようなものもありました。もしかすると別の資料等とは異なる記述が含まれていたかも知れません。コーヒーの研究は日々行われており、情報は公開された時期によって差異が生じているものもあります。こちらのページではあくまで掲載時点で公表されている情報や有識者の知見を元に纏めたものですので、相違のある点につきましてはご了承ください。