こちらでは、「コーヒー生豆の精製方法」についてご紹介させていただきます。
主に4つの精製方法があり、それぞれ工程が異なりますが、最終的に乾燥させるまでの間の工程に、違いがあります。
収穫したままの姿で乾燥させるナチュラル製法、実を剥ぎながらも一部を残して乾燥させるハニー製法、実を剥いで水洗いしてから乾燥させるウォッシュド製法、種子のみで乾燥させるスマトラ式など、精製方法は様々です。
「コーヒーの品種」のページでもお伝えしましたが、どの品種が、どのような場所で、どのように栽培され、どう精製され、選別されたかが、風味を分けるポイントです。その為、同じ品種で、同じ場所で栽培されたものだとしても、精製方法で風味は大きく異なります。
その精製方法を知る上で、まずはコーヒーの実(コーヒーチェリー)の構造からご紹介させていただきます。
コーヒーの実(コーヒーチェリー)
コーヒー豆 (種子)は、コーヒーチェリーの中に、2つ向かい合わせで入っています。
最終的にコーヒー豆となるのは、緑色の種子の部分です。
・種子 を包み込むように、
・銀皮(シルバースキン)
・内果皮(パーチメント)
・粘液質(ミューシレージ)
・果肉
・外皮、の順で、コーヒーチェリーは形成されています。
コーヒーチェリーの見た目はサクランボに似ていますが中身は異なります。果肉は少なく、種子は2つ入っています。
(種子が1つしかないものもはピーベリーと呼ばれています。丸っこいコーヒー豆になります)
コーヒーの起源といわれる「山羊飼いのカルディ」の話では、山羊も人もそのまま食べたとありますが、中身のほとんどは種子ですので、人がそのまま食べるのにはあまり向いていません。また、その話に登場する修道院では、煮だして飲んだともあります。
今のように焙煎をして飲まれるようになったのはいつ頃からか、諸説ありますが、飲用しはじめたのは12世紀中頃から、種子を煎るようになったのは13世紀頃からと言われています。
※山羊飼いのカルディの話
カルディという名の山羊飼いがエチオピアを放牧中に、草原に茂っている木の真っ赤な実を山羊が食べると、飛んだり跳ねたり、夜になっても興奮状態になっていることに気づき、カルディも食べてみたところ、眠気がとれ爽快な気分になり、その話を聞いた僧侶が修道院に持ち帰り試したところ、夜の修業でも眠らずに済んだというお話が各地へ伝わり、コーヒーの噂は世界に広まっていった、というお話です。
精製工程
ナチュラル(非水洗式)、ハニー(パルプドナチュラル)、ウォッシュド(水洗式)、スマトラ、と呼ばれる精製方法があります。地域によって多少の違いがある場合もありますが、基本的に4つのプロセスは、下記のような流れです。
ナチュラル (非水洗式)
ワインのような、果実のような、独特の風味に仕上がりになる「ナチュラルプロセス」
コーヒーチェリーそのままの姿で乾燥させる方法です。ブラジル、イエメン、エチオピアなどでおこなわれている伝統的なこの精製方法は、コストがかからないシンプルな工程で、環境にも優しいのが特徴です。コーヒーチェリーのままの状態で、天日や機械を用いて、2~3週間ほどかけて乾燥させます。収穫直後には真っ赤に張った実が、時間の経過とともに萎みはじめ、変色をしはじめます。乾燥を終える時には茶色く萎んだ状態となります。その後、脱穀機を用いて、外皮、果肉、パーチメント、シルバースキンを一度に除去する脱穀作業を行うと、緑がかったコーヒーの生豆となります。
ハニー(パルプドナチュラル)
蜂蜜のような甘味を持つものになる「ハニープロセス」
一昔前にはセミウォッシュドとも呼ばれていたこの方法は、粘液質が残ったままの状態で乾燥させる為、発酵しやすく、手間がかかるのですが、残った成分が凝縮され、蜂蜜のような甘味を持つものになります。地域により多少異なるものの、ミューシレージを残す量と乾燥にかける期間によって呼び名が変わり、殆ど除去したものは「ホワイトハニー」、半分程度残したものは「イエローハニー」、ほとんど残して短期乾燥したものは「レッドハニー」、ほとんど残して長期乾燥したものは「ブラックハニー」と呼ばれています。
ウォッシュド(水洗式)
スッキリとクリーンな風味に仕上がる「ウォッシュドプロセス」
スッキリとクリーンな風味に仕上がる「ウォッシュド」は、多くのコーヒー生産国で行われている方法です。粗選別の後、コーヒーチェリーを水槽に入れ、浮遊する枝なのど不純物や、沈殿する石などの不純物等と完熟チェリーを分けるところからはじまり、果肉を取除き、発酵槽や機械を用いて粘液質の除去を行い、乾燥させ、脱穀する方法です。ナチュラル精製にくらべると複雑な工程にはなりますが、その分、粒の揃った綺麗なコーヒー生豆に仕上がります。
スマトラ
独特の香りと苦みを持つ深緑色の「スマトラプロセス」
インドネシア スマトラ島の一部で編み出されたマンデリンの精製に用いられている方法で、他の精製と大きく異なる点は、脱穀してから乾燥させるという点です。雨の多いインドネシアならではで、乾燥を、半乾燥と本乾燥を2回に分けることで、乾燥にかける時間を短縮できるメリットがあります。ただ乾燥前の柔らかな状態で生豆を乾燥させると、形は変形しやすくなり、色はとても深い緑色となります。
以上が主な4つの精製方法になります。
そして2020年頃から話題となっている特殊な精製過程がこちら、
アナエロビック・ファーメンテーション
華やかな香りや芳醇な甘みが引き出される「アナエロビックプロセス」
近年では、アナエロビック・ファーメンテーション(アナエロビコ/アナエアロビック)と呼ばれる嫌気性発酵を用いた精製方法も広まってきています。ナチュラルやウオッシュドの多くは屋外で空気(酸素)に触れる環境で好気性の微生物に発酵させる「好気性発酵」を用いていますが、アナエロビックと呼ばれるこちらの方法は、空気に触れない環境を作り、嫌気性の微生物に発酵させる「嫌気性発酵」をさせたもののことをいいます。チェリーを密閉したタンクや容器等に入れ、36~72時間ほど無酸素状態に置き、空気に触れないことで活動する嫌気性の微生物が活動し発酵させることで、これまでの好気性発酵とは異なる発酵感の強いフレーバーを発生させる方法です。