AGE of NOVO
GUATEMALA
SHB SOLOLA ATITLAN PAMPOJILA FARM
VIVA LA VIDA

グアテマラ SHB ソロラ アティトゥラン パンポヒラ農園 ビバラビダ [PDF]


当たり前のコーヒーが、ちゃんと美味しい。

そんなキャッチコピーを、どこかの珈琲店で見た気がする。
今にして思えば、素晴らしいキャッチコピーだ。

2020年コロナ禍。当たり前の暮らしが崩れおちて、
新しい当たり前、ニューノーマルがやってきた。

今は2021年、7月半ば。

本来なら、夏休みの予定を立てているところだろうが、今は何もない。
少し前はフランスに行ったり、スイスにいったり。
今にして思えば、当たり前は、最高のシーズンであったかもしれない。

時を戻そう。


2019年、弊社ダイイチデンシの長いパートナー、日本珈琲貿易のヒロハタ氏と打ち合わせ。
日本珈琲貿易、まさに社名の通り、珈琲生豆の問屋さんでは日本でベスト3に入る会社。

話題は、そこそこ長く弊社が取り扱いさせていただいている珈琲銘柄について。

「めちゃくちゃ美味しいんですけど、ちょっとパンチ、奇抜さがないんですよねぇ。ちょっと当たり前すぎるというか」と私。

「そうですか、奇抜な感じ、なるほどなるほど。」とヒロハタ氏はメモを取る。

めちゃくちゃ美味しかったらいいやんけ、という顔はされなかった。
いつも真摯に意見を聞いていただける。

こうして顧客の意見を聞いて、シッパーや農園主にフィードバックされるのが日本珈琲貿易の生豆のクオリティが安定している要因のひとつ。
「いくら美味しくても、一年だけではあまり意味がない。」とは先方の武田社長もよく言われる言葉。
産地にもよく赴かれて、農園主と直接、今後の品質向上に向けて話をされることもある。

その話題の農園は、グアテマラのソロラ県、アティトゥランという名産地にあるパンポヒラという農園。

弊社でもずっとラインナップにある豆で、ファンもおられながらも、
めちゃくちゃ美味しい割に、実はそれほどには売れていない。

弊社で70種類ぐらい扱っている珈琲生豆の中では、中位ぐらいか。

しかしグアテマラといえば、中米、いや世界的にもトップクラスの産地。
その華やかな香りは日本人でもファンが多く、
ブラジルのコクと甘み、コロンビアの酸味、そこにグアテマラの香りを足した3種ブレンドは王道のひとつ。

ヒロハタ氏「価格もグアテマラのスペシャルティの割には、かなりお得と思います。」

確かに。弊社のもうひとつあるグアテマラ、アンティグアの農園ものより、随分安い。
スペシャルティのシングルオリジンで、安い、うまい。
あとは何が必要なのだろうか?

私「んんー、やっぱり名前が悪いんちゃいます?」

ヒロハタ氏「はい、名前ですか?」

私「パンポヒラって、ちょっと間抜けちゃいますかね?特にこのパンポって響き、パンポにヒラって…どう思います?」

もはや悪質なクレーマーと化しつつある私を軽くいなしながらヒロハタ氏は、そんなパンポヒラ農園についての詳細情報をクールに取り出した。


説明しよう。

パンポヒラ農園は、アティトゥラン火山とトリマ火山の間の山あいにある農園。
火山の近くには、コーヒー栽培に適した良い土壌があるというのは珈琲の定説のひとつ。

アティトゥランは「世界一美しい」といわれるアティトゥラン湖(誰がいうてんねん)がある風光明媚な場所。

標高は1600メートルほど。そんな環境で、毎年美味しい珈琲を作られているのがパンポヒラ農園だ。

パンポヒラ農園にとって、大きな転換期は2010年。
「アガサ台風」といわれた大きな台風被害、土砂崩れなどで農園は壊滅的な打撃を受け、存続の危機に見舞われた。




そこに現れたのが、現オーナーのアレックス氏。




2012年にそんなパンポヒラ農園を買い取り、精力的に再建、
今では現地のコンテストでも入賞する、災害前よりも実力ある農園に成長。

アレックス氏いわく、台風での土砂崩れの被害は相当甚大だったが、
その土砂崩れにより、多くの岩などを含むミネラル分がその土壌に、
より独特の風味、いわばテロワールを与え、
その後、ユニークな味・香りのコーヒーに進化したそうだ。
塞翁が馬、といおうか、世の中は何が幸いするかわからない。

思えば、弊社もリーマンショック、震災を経て、仕事が激減したその頃に、
日本珈琲貿易さんと出会い、コーヒーの焙煎機の開発を開始した。

そして、2012年にリリースした魅せる焙煎機「NOVO MARKⅡ」、
そう、仕事がなくなって、新しく珈琲事業に注力したからこそ、今がある…



「では、こうしませんか?」

ひとりしみじみしている私をよそに、
ヒロハタ氏より、ひとつご提案いただいた。




「いつもご購入いただいているパンポヒラ農園の珈琲生豆は、様々な区画でとれたものを混ぜているものなんです。」

そう、たとえシングルオリジン、単一農園といっても、ワインのようにひとつ向こうの斜面では土壌の成分が変わったり、日当たりが変わったりで、もちろんその分、味も変わる。

「先ほどご説明したように、台風によって今もいろんなところで土砂崩れの痕跡があるのですが、
それら土の交じり方によって、けっこう区画により味にばらつきがあるのを、今はMIXしてブレンドしています。
しかし次のダイイチデンシさんのロットは混ぜずに、一つの区画のみのエッジがきいたものの中から、一つを選んでいただきます。」

なるほど。これはまさに弊社特別ロット「AGE of NOVO」の王道のやり口。
いつも競合の珈琲商社「ボルカフェ」とつるんで弊社がオリジナルアイテムを開発しているのをヒロハタ氏はよくご存じのようだ。

「はい、それをいつもやられている「AGE of NOVO」シリーズで、
 毎年NOVOオーナー様専用ロットにしませんか?もちろん、名前もダイイチデンシさんでつけてください。
 麻袋のデザインからオリジナルにするように農園と交渉します。」

なんとパーフェクトな提案、しかしながらひとつ懸念があった。

オリジナルのロットとなれば、けっこうな数をオーダーしないといけないのではないだろうか。
麻袋まで専用にしてくれるとなるとなおさらだ。もっと人気なアイテムでないと厳しいはず。




「そこは任せてください、交渉します。
 あとそれと…たぶんですが、ものすごく売れると思いますよ、ダイイチデンシさんなら。」

有能か!

のせられた私はいつもの倍の数量をオーダー、
その後もテキパキと話は進み、パンポヒラ農園からも快諾を得たと連絡が来た。
しばらくして、麻袋デザインの話に進展。

ヒロハタ氏「デザインを作成いただいて、あと、アイテムの商品名は、どうされますか?」

パンポヒラの名前をディスっていたことをしっかり記憶されているようだ。

「そうですね、何か呪文みたいな名前がいいんですよ、つい言いたくなるような感じ」

「呪文ですか?」

「グアテマラなので、英語はちょっと違うなぁ、と。
 スペイン語、もしくはマヤ文明のころから伝わるような呪文…アブラカダブラみたいな、
 ちょっと世界を救うような呪文」

「わかりました、ではもう少し考えていただけますか?農園には保留しておきます。」

2020年、その後世界は、本当に救いの呪文が必要な状況になる。



手前味噌で恐縮だが、コロナ禍以外の私の話をしよう。

2020年3月に、シンガポールとインドネシアにNOVOの納品と修理にいった際、
未知の悪性インフルエンザウイルスに感染し、インフルエンザ肺炎に。

東京に戻り病院にいったときには、あと一日遅れていたら死んでいたといわれる状況、
そのまま入院後もコロナとも疑われて、しばらく放置されたりしながら、悪化の一途。

坂道を転がるようにたどりついたのは、人工呼吸器をつけられた救命救急病棟。

そこでとあるお医者さんとミラクルのような出会いを機に回復し、なんとか死線から這い出てきた。

4月には無事に後遺症もなく全快し、退院。
コロナで緊急事態宣言のため夏頃までは渋谷でリモートワーク。
そして秋に京都に行き、久しぶりにヒロハタ氏と再会した。


「本当によくご無事で。」

電話やメールではよく連絡をしていたが、久しぶりの再会。
クールなヒロハタさんには似合わず、少し熱い迎え方をしていただいた。

そしてパンポヒラ農園のサンプルをいただいた。
約束いただいた通り、収穫されたものをすぐに取り寄せ、区画ごとにわけたものが5種類。
早速に全てをNOVOで焙煎し、カッピング。

どれも素晴らしい出来に感じたが、もっとも香りが際立ったロット、1つにしぼる。

名前を見ると「カフェタル・ヌエボ」という区画。
ヌエボはスペイン語で、新しい。
スペイン語によく似たポルトガル語で、新しいはノボ、
つまり「NOVO」の区画。
偶然だが、なにやら、良いめぐりあわせに思えた。

「これにします。」

「わかりました。新しい20-21クロップはこの区画のみの、オリジナルロットにいたします。
 そういえば、名前は決められましたか?」

「あ、名前は、VIVA LA VIDA(ビバラビダ)にします。」

「たしかに、呪文みたいですね。差しつかなければ、どんな意味なんでしょうか?」

スペイン語でVIVAは、素晴らしい。
VIDAは、LIFE。
素晴らしい生命、生活、日常、人生、それをお祝いしよう、そんな意味。





「なるほどです、今の時代にピッタリですね。あと、本当にご無事でよかったです。」

何人かの医者から死に至る症状と言われ、入った救命救急病棟から、
全快した退院時、ひとりタクシーに乗り込んだ時を思い出す。

広尾の病院から、渋谷の自宅まで。

ちょうど一回目の緊急事態宣言中、
交通量も人もまばらな渋谷のスクランブル交差点、109、見慣れた風景がみえた瞬間、
世界がキラキラ輝いていることに気が付いた。




名前は「VIVA LA VIDA」にしよう。
そう決めたのは、日常への帰り道。

奇抜な味や、流行の味なんて、今はどうでもいい。
当たり前に美味しい珈琲を、貴方に届けられる幸せ、そんな想いをこめて。



グアテマラ SHB ソロラ アティトゥラン パンポヒラ農園 ビバラビダ [PDF]

文:中小路 通(ダイイチデンシInc)
取材ご協力:廣畑 様 (日本珈琲貿易株式会社)






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