価値を心から理解してくれるお客様は、少し遠くの国にいる。
「YOU のロースターは、世界で一番だ、
しかし、YOU はまだそれがよくわかっていないようだ」
当時は日本以外では、香港に一台販売した実績しかない。
もちろん、世界一は言い過ぎではないか、そう思っていた。
自分の買ったものが良いものだと信じたい、
そんなお気持ちではないかと。
世界で一番と言われるオーナーさんは、
インドネシア、ジャカルタにいる。
その ジョカント氏の会社は、
主に不動産などを運営されている会社。
そんな彼は親日家で、若い頃は日本の会社にも勤められ、
今もよく日本に来られる。
そして、安いのに美味しいドトールのコーヒーに魅せられて、
遂にジャカルタで、自身のコーヒーチェーンを開かれた。
ブランドの名前は「DOCCO COFFEE & TEA」。
目標はインドネシアに50店舗。
5店舗に1つは焙煎機を置く計画だ。
そしてその旗艦店に3年前、
弊社製「NOVO MARKⅡ」を導入いただいた。
投資家としても大成された目利きが生きている。
世界中の展示会や市場から集められた、膨大な情報を持たれ、
自ら世界中のコーヒーマシン、豆や備品をセレクトされた、
本格的なコーヒー専門店。
しかし、内装は流行りのサードウェーブ系ではない。
ちょっと家庭的、誰でも入って来やすいお店にされた。
弊社のロースターを見つけられたのは、
3年半前の東京ビッグサイトでの展示会。
半年のちに、今度は弊社のある京都本社にこられ、
その場でご契約された、電光石火。
「世界一のものだと確信した、YOU の会社はグレイトだ。」
ここから、お付き合いと、世界一の連呼が始まった。
お支払いも電光石火、納品予定は半年後なのに、
前金で2週間後には振り込まれた。
2台目を購入されたのはその翌年、
そして今では5店舗を運営されている、
スピード感のあるオーナーさんだ。
「この豆の焙煎レベルは?ハイロースト?」
よくメッセージ、たまに電話もかかってくる。
「パナマのママカタはレベル3、
シティローストだよ、ミスター」
私は敬愛する意味合いで氏のことをミスターと呼ぶ、
近頃はご家族も京都や東京にこられたり、
私もジャカルタには何度も行ったり、
お客さんの垣根を超えて信頼を軸にした
パートナーとしてのおつきあいだ。
そして、スペシャルティの生豆も購入いただいているので、
よく色々とご質問がある。
そこには、コーヒーへの探究心、そして、想いがある。
「スターバックスの豆を知ってる?
鮮度がない、香りもない、
しかし、あれが世界を席巻しているんだろう、
YOU はもっとアピールをしなくてはいけない」
「ただ、ジャカルタでは、YOU の豆とロースターのおかげで、
私の店は、スターバックスに負けていない。
ファッションでコーヒーショップに行く人は
あっちでいいけど、コーヒーの本質は、ここにある」
「本質」とはなんだろう?
ミスターは言う。
「インドネシアでは、コーヒーは作っても、
コーヒーの味がわかる人がいない。
でも、私は日本に来て知っている。日本人は、
ドトールみたいな安いコーヒーショップでも美味しい。
それは素材、焙煎と鮮度をしっかりしているから、
そこが本質だ。」
ミスターは、めちゃくちゃ話す、リーダーシップある人だ。
英語で、私がわかってなさそうな時には日本語を MIX させて、
明るく、そして熱く話す。
「私はインドネシアで、本当に美味しいコーヒーを広めたい。
フェイクの、ファッションのコーヒーはたくさんだ。
最初はドトール本社に行って、
ドトールの FC をインドネシアでやろうとしたけど、
YOU のロースターを見て、気が変わった。
外国のFCに投資して儲けるのはある種簡単、
今までたくさんやってきた。
でも、これがあれば、インドネシアで、他にない、
本当のコーヒーを広めるられるって。
新しい歴史や文化を自らの手で作るんだ!」
ミスターは 60 歳を超えられ、
お金や名誉は、いっぱい手にされたようだ。
奥様は女優さんのような方、娘さん、息子さん、
素敵な家庭も築かれている。
そして、これからは、
インドネシアの文化に貢献したいと言われる。
本当に、価値のあるものも広めたい、
一緒にやろうぜ、ブラザー!と私の肩をたたく。
豊かな人の発想は常に未来志向だ。
10年先、20年先、30年先。
ご家族、日本に留学されている息子さんまでご紹介いただいて、
食事をともにさせていただいている意味が、
私にもやっとわかってきた。
2017 年 12 月 22 日、
5店舗目が OPEN したミスターの店には、
燦然と NOVO MARKⅡ が置かれている。
フランスから来た超大型スーパーマーケット
「カルフール」入口の新店舗。
工事中に一緒に行ったときは、粉塵の舞うスケルトンの現場で、
2時間近くミスターは、私、工事現場のメンバーと
配置について、熱く議論されていた。
「YOU のロースターは、一番目立つところだ。
ここに置いて、全員に見てもらう。
そして、飲んだもらおう、我々の美味しいコーヒーを。」
ジャカルタは高度成長の真っ最中。
いたるところに巨大なビル、ショッピングモールが立ちのぼる。
そして豊かな国は、お茶からコーヒーを飲み出す傾向にある。
しかし、インドネシアには、焙煎士はほとんどいない。
だから外国のコーヒーブランドがいっぱい来る。
スターバックス、パシフィックコーヒー、エクセルソコーヒー、
などなど。
そこをミスターは、自国のブランドで勝負する、
世界のブランド豆だけでなく、
インドネシアのあらゆるところの豆を揃える。
およそ30種類近く。
「YOU の焙煎機は、誰でも焙煎できる。
パフォーマンスも華やかだ。
フレッシュで、香り高い本物のコーヒーを出すことができる。
インドネシアのコーヒーの魅力を店頭で、
伝えることができる!」
ミスターが世界一のショップロースターだと絶賛された理由は
ここにあった。
オリジナルの、個性のある店を作ることができる。
そして、焙煎職人を育てる時間をパスして、
インドネシア中に、一気に広げることもできる。
中国ではスターバックスが、
一気にそのブランド力を武器にコーヒーを広めたが、
インドネシアはどうなるだろう。
素晴らしい豆が取れる国では、
新しい、独自のコーヒー文化が花開いてほしい。
私たちの MADE IN KYOTO のテクノロジーが、
それを支えることができるなんて、幸せである。
さて、今、私たちは世界一のショップロースターを目指して、
世界に通用するブランドを作るべく、
ヨーロッパの方にも販路を広げている。
それはきっとミスターのおかげだ。
「YOU のロースターは世界一の力がある。
もっとアピールしろ、YOU の成功は間違いない」
何度聞いたことだろう。
サブリミナル効果だろうか。
今ではすっかりその気になっている。
熱い想いに応えるときがきた、そんな気がして。
文責・撮影 中小路通(ダイイチデンシ株式会社)