「コーヒー豆屋さんは、コロナ禍でも売り上げを伸ばしています。」

激動の2020年。
そんな話が伝わってきたのは4月。 緊急事態宣言の最中。

弊社ではショールーム見学も4月はお断りさせていただき、テレワーク中。
日々、飲食店さんはこれから大変なことになる、いや、もうなっている。そんなメディアからの濁流のような情報の中、NOVOをお買い上げいただいた全国300余りのお客様は、どうされているのか、とても不安であった。しかし不躾に伺うようなことはできない。

そんなときに、晴天の霹靂のような、ポジティブな一報。

情報元は、実際のNOVOのお客様からのご連絡に加え、弊社のお取引する生豆商社さん、そのほとんど全社が似たようなお答え。確信に変わる。

ステイホームの影響で、家庭でのコーヒーの消費量が、ものすごく増えている。

それらを裏付けるように弊社のNOVOのお客様へ販売している生豆の出荷数もコロナ禍前の1.4倍増。考えれば、NOVOはショップロースター、自然そのユーザー様は、基本的には一般のお客様向け、需要が伸びている。

もちろん、コーヒー豆屋さんとしては良いが、カフェ営業ができないので、トントンだと言われるお客様が最も多く、物凄く売り上げがよいお客様ばかり、というわけではない。観光地のカフェのお客様は逆に厳しいとおっしゃられており、一概には言えない。しかし、このコロナ禍において、売り上げがあがらず、つぶれてしまったというお客様は現時点でひとつもない。




そして、コーヒー豆専門店として、喫茶営業をされず、カフェへの卸がメインでもなく、一般の消費者さんに販売されているお店はとても順調。特にECサイトをお持ちのところはそれに拍車をかけられ、お店史上最高の売上を更新されたり、前年比250%ものお店も。

コロナ禍というのは一種、何かのルールが突然変わってしまったようなものだろう、それに対する対応に、まさに今、飲食店さんは一所懸命にがんばられている。しかし、少しの変更で済んだ、むしろ、前からそれに近かったところは、ものすごく有利である。

こんな世の中になるとは昨年は誰も予想できなかったこと。これらはただの運でしかないが、NOVOを置いて生豆を販売されているお客様は、通常の飲食店さんより、ラッキーと考えてよいだろう。本当に良かった。

ふと、昨年11月1日にオープンされ、3月末の時点でも、毎月最高売上を更新されているとご連絡いただいた、とあるお店が気になってきた。

テレワークが明けたら、すぐに、必ず行きたい。

つい先日まで、お世話になったお店がいっぱいつぶれてしまったらどうしようと、不安に思っていたのに、売上があがっていると聞くと私も現金なものだ。

その店の名前は「まめとも」さん。
このコロナ禍、いや、オープン時から、私が感じるに、ミニマルかつ最先端の珈琲豆屋をされている。




1、鮮度が命、店頭でのオンデマンド焙煎。
2、豊富な知識、女性オーナーならではのキュートな目線で生豆の魅力をおすすめ。
3、無料試飲が充実の、実際の五感で選べる、まるで珈琲のショールーム。
4、会員になればなるほど得をする、地元に密着した常連さんを呼ぶシステムづくり。



場所は、ダイイチデンシからも近い、大阪の北摂といわれる地区、吹田市。
ガンバ大阪の本拠地。
その住宅街のど真ん中にある。

コロナ禍が少し落ち着きだし、お伺いしたのは夏。




決して駅近ではない、ちょっと細い、地元の住民しか知らないような道沿い。
お店の駐車場に車を停めるのも少し難しい。




運転が苦手な私がちょっとまごついていると、オーナーの大島さんがマスク越しからもわかる笑顔、誘導いただいた。
そのまま店内へ。





入口から、すでに見える赤いオリジナルカラーの「NOVO」、
そして、特徴的な、透明のキューブ状のBOXに生豆がぎっしり入って並ぶ。





特注で作られたという透明のふたをあけると、少しフルーティな生豆の香り。
生豆にも個性がある、ということを五感で楽しめる。

「うんちくを言うより、見て、感じてもらうのが一番ですね」とは大島さん。

大島さんはコーヒーインストラクター1級というとても難しい資格を取得され、店内にも様々なコーヒーにまつわる映像や、冊子がおいてあるが、基本的には五感で、珈琲を楽しんでほしいといわれる。

「NOVOなんてその典型ですよね、本当にまめもとがあるのは、このおかげです。」

大島さんは私の目をまっすぐに見て、そうはっきりとおっしゃられた。
少し照れる。話題を変えよう。


「あれ、この生豆のBOX、ひとつだけ、ほんの少ししか入ってないですね」と私。

他のBOXに比べて、明らかに底だまり。

「これは、御社のですよ。ニュークロップ遅れているグアテマラ、パンポヒラ農園」と笑顔のままの大島さん。

うっかり地雷を踏んでしまった。

「す、すみません、それはそうといい天気ですね…」

うまくごまかせたようだ。




オーナーの大島さんは、大手飲料会社での26年のキャリアの末、独立。念願の珈琲豆店を昨年オープンされた。




とても豊富な知識を持たれながら、わかりやすく説明をされる。
そんな珈琲講座も、定期的に開催もされ、大人気と聞く。オープンされてすぐにお邪魔したときにも、すでに多くの常連のお客様を獲得され、その応援に来られていた方々も前職のつながりの方も多く、良いご縁を大切にされていることがうかがえた。

会員になると多くの特典があるお店、つまり常連さんの獲得に最も力をいれられているのが印象的だ。ちょうど新規のお客様が来られていたが、オーナー自ら、しっかりお客様の好みを聞かれて、その間にアルバイトの方が流れるように試飲の珈琲をご用意。




購入されて帰られるころには、「まめとも会員」になられていた。

観光地で、もしかしたら一度しか来ない人を相手に、一期一会で取り組まれているお店も素晴らしいと思うが、なんとか常連さんにしたいと、初めて来られた方に丁寧にご対応されているお店もとても素敵だ。お客さんにどうしたら次来てもらえるか、いつも真剣に考えられている。

「今はまめとも会員は、873人なんですよ。」(取材時:2020年9月)

まめとも会員さんにはLINE等で様々なお得な情報が届き、常連化に拍車をかける。




「これ、良かったら飲んでください。」

試飲というには大きなカップに珈琲が入っている。しかもお菓子つき。

「ブラジルの新しい銘柄で。フルーティで、とても人気なんです。」

たしかにエチオピアのような華やかな香り。NOVOの特性が最もよく出るレンジ。
それを飲み終わるころには、次はね、とまた新しい珈琲。

大島さんと話をするうち、気付けば4杯ほど飲んでいた。
驚くべきことに、これらはすべて無料。ゆっくりくつろげる席もあり、お菓子までついているのに。

そう、まめともさんでは珈琲は無料で、あくまで珈琲豆専門店なのである。




「味のわからない珈琲豆を買うのって、私、とても勇気がいると思うんです。
 いっぱい飲んで、まず比べてもらいたい。」

大島さんは、当たり前のように言われる。普通にコーヒー1杯を売ることもできるのに、無料で飲み放題。
このオーナーさんの潔いご姿勢が、実は真似できるようで、真似できないところに思える。




「まめとも」さんは、あくまでお客さんの目線で、珈琲豆を買っていただく時に必要そうなことは全部やる!そんなパッションが伝わってくる。きっと夢であるお店をされると思われてから、こういう店をしたいという明確なビジョンが、長い年月の中で、ひとつずつ固まってこられたのだろう。それが見事に花咲いていた。




そして、それらのビジョンにNOVOを加えていただいたのはとても光栄だ。

大島さんは珈琲のプロフェッショナル。それこそ様々な焙煎機を沢山知られている。それらをまさにひとつずつ研究され、弊社のショールームにも来られ、展示会にも来られ、2年近くをかけて、弊社製の焙煎機を選んでいただいた。

そのためだろうか、これでもか!というほど、NOVOの良いところを全面に活用されている。

店頭で、短時間で、煙も少なく、魅せる焙煎機というのが、NOVOの売り。

まさしくガラス張りの店の最も目立つところ、通り過ぎていく車からも見える位置に置かれている。

そして、オンデマンドによるオーダー焙煎。短時間でローストできる特性を武器に、そのお客様のためだけに焙煎され、常に新鮮な豆を、お客様の好みの焙煎度でお出しされる。待つのが苦手なお客様も多い大阪のため、もちろん電話でオーダーして焼いておいてもらうということも可能だ。しかし、焙煎を待つ間も、珈琲の試飲や新しい情報で、ひととき珈琲について語れるのもよい時間だろう。

まるでここは試着室。

「#試着室からこんにちは」なんてハッシュタグが流行る時代。試着して、写真を撮り、買わずに帰るインストグラマーがいると聞く。一昔前なら、店員さんにとっては営業妨害でしかないだろう。しかし、そのSNSを見て、インターネットで多くの方がそこのECサイトで買う今、アパレルの路面店はもう大きな試着室かもしれない。

大島さんの珈琲店は、その点、珈琲豆屋さんの最先端だろう。
試さずに買うなんて、ありえなくなーい?という時代の声にしっかり応えられている。


「あ、この方、NOVOの社長さんなんですよ」

とお店で常連さんに紹介いただくと、3組ほどおられたすべての方に笑顔で迎えていただいた。それこそ、LINEやInstagramもやられている方々のようだが、生で、いろいろなありがたいご感想をいただいた。

「香りが抜群。」
「近くの〇〇コーヒーなんて、目じゃないわよね。最高。」
「もう他の店には行けない。」
「私の大切な日常のひとつ。」

そして、週一度必ず来るというお客様は、3種類を計1キロ購入され、また来週ね、と帰られた。お客様を外まで、車の誘導も兼ねて送られる大島さん。

「1キロとはすごいですね」と店内のスタッフの方に聞く。

「本当はもっと多く言われていたのですが、新鮮な豆を買ってほしいと、その週で飲み切れる量ででどうでしょうか、とご提案させていただいているんです。」とスタッフさん。

「まぁでも、STAY HOMEで飲まれる量も増えられて3種類、いつも1kgを購入いただけるお客様で、本当にありがたいです。」

大島さんはお客様にあわせて、ご提案することもお好きなようだ。

「わかわかブレンド、というのも作ったんです」。とお店に戻られた大島さん。

「なんですか、それ」と言いながら、見せていただく。

見ると深煎りの豆が半分と、浅煎りの豆がちょうど半分。

「NHKが去年、テレビで珈琲の健康特集もしていて有名になったんですけど、浅煎はクロロゲン酸が豊富で美肌効果UPでしょ?で、深煎はニコチン酸が豊富だから、物忘れがなくなるのね。だから、良いとこどりで、いつまでも若々しいから、わかわかブレンド。」と笑顔。

ネーミングも、見た目も、面白い。
そして、キュートだ。

「これはグアテマラのアティトゥラン、SHBでなんじゃかんじゃら農園、ハニーです」と傲然とする珈琲屋には逆立ちしてもできないことだろう。

どちらが愛されるかは、いうまでもない。

本当のプロフェッショナルは、むずかしいことを簡単に伝えると聞く。
その点、「まめとも」というお店の名前は、天才的ではないか。

まめを介して、おともだちになりましょう。

そんなオーナーのオープンなマインドが込められている。
私が帰る時も、まるで、長年の友人が帰るときのように見送っていただいた。




さて、1か月後、また私はまめともさんへふらり。

「実はこの前、また雑誌に載ったんです」

見るとSAVVYという有名誌。今回も大きく取り上げられている。




開業されて1年と少し経過された。
雑誌にも時折、掲載される地域の人気店になられた今、もしかしたら他人に言えないご苦労もあられるかもしれない。しかし、それらを全くみせずに、お店ではいつも楽しそう、ひとりひとりのお客さんと夢中で接客されている。




大島さんには夢があり、情熱がある。
まだまだ夢の途中。
これからも、たくさんの「まめとも」と、素晴らしい日々を過ごされていくに違いない。




珈琲オーダー焙煎 まめとも
文責・撮影:中小路通(ダイイチデンシ株式会社)
2020年11月掲載