焙煎機見学希望のメールが届き、
東京ラボセンターまでお越し頂いたのは

どこかシャイな雰囲気の
眼鏡をかけた男性2人組。

確かその時、
第一声では こう仰っていた。

「これから2人で、カフェをしようと思うんです」

“筆者によるイメージ画”

ご開業前に焙煎機の見学をされる方も多く、
そのことについては、特に何の違和感もないハズだったが、

それはいつ頃からか、どの辺りでかとお聞きしてみても、
ハッキリとした返答は無く、
全てモゴモゴとフニャっとした返しで、
途中からは何か妙な違和感を感じ出していた。

『これはもしや…
  夢見るカフェ好き男子2人組の妄想に
  付き合わされているだけなのでは…』

そんな考えが過ったりしながら
その日の焙煎機ご見学会は終了した。

ご見学を頂いてから1ヶ月後、

「再度打ち合わせをしたいのですが可能でしょうか?」と、
メールが届いた。

再度お越し頂いた際のお二人は、
前回とは何か違う雰囲気を出されていた。

そして、 第一声でこう仰った。

「NOVO MARKⅡをうちのカフェに置こうと思うんです」

“再び筆者によるイメージ画”

えっ??

「実は既に神楽坂でCAFE NAGASHIMAという
 喫茶店をしておりまして、
 そこにこの焙煎機を置こうと思っています」キリッ

マジか!

『妄想男子とか勝手に思って申し訳ございませんでした><』
とか 言える訳ない。

前回感じていた妙な違和感、それはどうやら
素性を隠しておられたから出ちゃっていたもののようだった。
(その辺り、わりと敏感肌です)

ガツガツ営業に来られる事を警戒し、
予め素性を隠す打ち合わせをしてから来られたそう。
(ガツガツ営業、ダメ。ゼッタイ。)

しかも、お二人は御兄弟だった。
そこまで隠さなくていいでしょ。笑

2回お会いしてやっと安心して頂けたのか、
今度は色々と話していただけた。

CAFE NAGASHIMAは、
昭和48年に日本橋でご両親がスタートされた喫茶店。

その日本橋では再開発が入り、
現在お店のある神楽坂には、
4年前に移ってこられた。

椅子やテーブルなど、全てその当時の物を持ってこられ、
店内の雰囲気は日本橋にあった頃とほとんど変わりがないそう。

確かに4年前に出来たお店にしては
とてもレトロな雰囲気が漂っている。

“座り心地のよさそうなソファ”

その移転のタイミングで息子さんにバトンを渡され、
今では御兄弟と、お母様の3人でお店をされており、

老舗喫茶は新たな場所で
一からのスタートとなった。

“顔写真はちょっとハズイとの事でこんなショット(お兄さん)”

ただここ、神楽坂に移転をされてからは、
実はちょっと悪戦苦闘されていたそう。

「日本橋の頃は、
 正直何もしなくてもやっていけていました。

 私は小学生の頃から、弟なんて幼稚園の頃から、
 反抗期も、青春時代も、ずっと店を手伝って見ていましたが、
 普通にさえしてれば
 サラリーマンの人達が沢山休憩に入ってきていたんです。

 そもそも45年前は喫茶ブームの頃で
 コンビニが無ければ、自販機も無い、
 そして日本橋は家賃も高い、となれば、 競合も少なくて、
 連日サラリーマンの方で賑わってましたね」

「お店に来て頂く方だけではなく、
 近くの会社さんから会議用のコーヒー出前があったりもして
 とにかくとても忙しかったです。

 店が忙し過ぎる時には出前は断ったりもしていましたが、
 それが今ではペットボトルに、コンビニコーヒー、
 出前の注文はほとんど無くなりました。

 時代が変わりましたね。笑」

「しかもここ神楽坂は、オフィス街ではなく、
 サラリーマンがあんまり歩いてないので
 正直その景色にも、はじめの頃は戸惑いました。

 というか、それ以上に
 お店に人が全然入って来なかったので
 そっちの方がめちゃくちゃ戸惑いましたけど。笑

 ただその時、感じました。

 ここではお店の能力を上げないとダメだ。
 珈琲にももっと特徴をつけないとダメだ、と」

そこで弟さんがネットで焙煎機を調べていたところ、
弊社のNOVO MARKⅡを見つけられ、
ド素人2人組のフリをして、
東京のショールームにお越しになられた、という流れ。

実際NOVO MARKⅡを導入されてからの事を伺ってみた。

「すごいありがたいです、
 あちこちで焙煎機を見ていたんですけど、
 NOVOは100gからいけますし、小まめに焙煎出来ますよね。
 だからいつでも焙煎の良い香りが出せる
 この焙煎の香り、大好きなんです。

 特にケニアを深煎りした時に出るあの香りが・・・
 (遠くを見つめられながら)

 そして何より魅せられる 思ってた通り、いや、
 思っていた以上でした」

嬉しいご感想のオンパレード。

そんなに良いことばかり言わなくて良いですよ、
逆に悪かったところも教えてください、
このままここに書くとなんか嘘っぽくなるので。

「いやいやいやいや、無いです、ほんとに無いです」

有難い限りです。

“こちら弟さん。御兄弟揃って顔出しはハズイとのこと”

今ではオリジナルの焙煎プロファイルも完成され、
ここでしか飲めない特徴のあるコーヒーを提供されている。

そもそもここ神楽坂には縁もゆかりもなく、
移転場所を探す際にお父様が出された唯一の条件、
『人通りが多いところで』で、 探していたら、
たまたまここになったらしい。

日本橋のオフィス街、サラリーマンごった返し地区から一転、
神楽坂での客層はガラリと変わり、大半がマダムだそう。

そしてそのマダムの多くは、さっと休憩に入るのではなく
落ち着いて結構な⾧居をされる。

席に着いてキャイキャイ写メを撮り合ったら
後は各自スマホに向き合い、 静かに「イイね!」を押し合う。

チャラいめのカフェ等で見かける軽薄な光景は ここには無く、
マダムたちは楽しそうに会話を延々と楽しんでられる。

今やどこのお店でも Wi-Fiや、
スマホを充電する為の電源が各席にある時代に
そんなものは一切無くとも
ここではコーヒーカップを片手に
楽しい時を過ごせるのだろう。

デジタルを介さない老舗喫茶では
一番大切なものを
自然と見つけさせてくれるのかもしれない。

そんな老舗喫茶店のナガシマさんが
今回弊社の焙煎機NOVO MARKⅡを導入されたのは
結構思い切ったご決断をされた事だと はじめは思ったが、

それはお店の能力を上げるため 一つひとつ、
超慎重に考慮された結果だと、
今は思う。

「これからは積み上げてきた経験だけではなく、
 守りたいものを守りつつも、
 積極的に新しいものも取り入れて、変わっていきますから」

そう話す御兄弟と、
それを見守るお母様の表情は
とても明るかった。

CAFE NAGASHIMA

 

文責・写真:東京ラボセンター 高島(ダイイチデンシ株式会社)
2018年8月掲載