アメ横、浅草寺、上野恩賜公園、
都内最小の行政区ながらも、有名な観光地が沢山ある台東区。

その区の中心あたりには「かっぱ橋道具街」と呼ばれる
南北に800mに渡る大きな商店街がある。
巨大なコックさんがいるこちらのビルが、その目印。

業務用の、調理器具や厨房器具、食器、食材、調理衣装、
樹脂などで作られた食品サンプルなど、何でも揃う問屋街。
TV等などでもよく取り上げられているので
ご存じの方も多いだろう。

そこから南へ300mほど進んだ先に
碧いタイル張りが特徴的な建物が見えてくる。
こちらが今回お邪魔した
珈琲自家焙煎店 石川コーヒー㈱&リバーストーン」さん。

石川コーヒーは、この地で三代続くコーヒーの卸問屋さん。
現在は「石川コーヒー㈱&リバーストーン」として、
自家焙煎豆の販売と喫茶店を
お母さまと、お姉さまとの3人で、営んでおられる。

こちらが三代目店主の石川輝明さん。

既に30年近くもコーヒーに携わっておられる
コーヒーの大ベテラン。

折角なのでと、早速1杯いただくことに。
3連光のドリッププレートがとても綺麗。

クリアで雑味の無い見事なブレンド。

「うん、うまいコーヒーだ、
 いかにもコーヒーって コーヒーだ」

孤独のグルメ風に感想を言ってみたが、
リバーストーンパイセンにはスルーされた。

輝明さんのコーヒーのキャリアスタートは20歳の時。
先代が交通事故によりご早世され、
急遽継がれることになったことからはじまる。

「まだ右も左もわからないうちだったので、
 どうしていいか分からないまま、とにかく配達とか、
 出来ることを頑張ってはいたんですけど、
 やっぱりコーヒーの事、まだ全然分からなかったんです。

 そして、家業を継いで3年くらい経った頃、
 付き合いのあったユニオンの先代社長が言ってくれたんです。

今のままでは潰れてしまうから、
 ここにきて、コーヒーを学びなさい
」と。

 その一言でユニオンでも働かせていただくことになりまして、
 家業の石川コーヒーの仕事は午前中に済ませて、
 午後からはユニオンでコーヒーのことを学びながら仕事、
 そんな生活を26年間続けさせていただいていました」

株式会社ユニオンは「かっぱ橋道具街」の中心部にある
昭和37年から続くコーヒー関連の老舗商社。

店舗は通りを挟んで両側にあり、
本店(写真右)ではコーヒーなどの抽出器具や食器などを、
別館(写真左)では自家焙煎された珈琲豆等を販売されている。

付き合いのあった珈琲屋の息子を引き取って
自身の会社で学ばせるなんて、とても人情の深さを感じる。
「ユニオンの先代社長には感謝しかない」と石川さん。
きっとその気持ちに応えるべく努力されてきたのだろう。

そんな石川さんが、NOVOをはじめて見られたのは、
5年前に東京ビッグサイトで開催されたSCAJの会場だった。

「この焙煎機をはじめて見た時、衝撃が走りましたよ。
 見た目も、性能も、すごいなって」

「これはまだ昭和の頃の話ですが、
 祖父はここで60kg釜の焙煎機で焙煎してたんです。
 でも焙煎で煙をモクモク出していたら
 さすがに近隣から苦情が沢山きて、焙煎を辞めたんです。
 それ以降、焙煎は他所に委託をしていました。

 でも、このNOVO MARKⅡなら煙は少ないし、
 またここで自家焙煎ができる、絶対に買う!
 あの時そう思いながら見てました」と、石川さん。

そして2021年9月、石川さんは行動に移された。

渋谷の弊社ショールームまで見学にお越しいただき、
改めてNOVO MARKⅡをチェック。
その際には納期も尋ねられ、大体2ヵ月ほどとご返事。
これから店舗を改装されるご予定とのことで、
その時期にあわせてご契約をいただくお約束をいただき、
その日を終えた。

だがその数か月後、
コロナ禍による世界的な半導体不足の影響を弊社も受け、
NOVOの納期は軽く倍以上かかる見込みとなってしまった。

タイミングを見ていただいている最中にこれはマズイと、
石川さんに状況をご連絡すると、すぐさま飛んでこられ、
ご契約をいただくことになった。
急かすようで申し訳なく思ったが、この時は致し方無かった。

そして2022年5月、NOVO MARKⅡを導入され、
石川コーヒー㈱&リバーストーンとしてニューアルオープン。
以降は、こちらのお店だけに専念されている。

店内は、通りから見える位置にNOVO MARKⅡ、
入ってすぐのところには生豆が並べられ、
奥にはカウンター席とテーブル席が並んでいる。

「焙煎プログラム、結構イジリましたよ 笑」と石川さん。
なんでも、深煎りにしても表面にアブラが滲みにくく仕上がる
オリジナルのプログラムを作られたらしい。

焙煎中の豆の動きを見ていると、
既存のプログラムとは確かに異なる動きをしている。

「まぁ、豆の表面にアブラが浮いていなくても、
 結局豆の中には残りますし、
 それをペーパーフィルターで淹れているので、
 どっちにしても紙が吸うから
 あまり風味には関係無いとは思ってるんですけどね、
 ただほら、瓶に入れててもアブラが無くて綺麗でしょ」と
深煎りされた豆の入った瓶を見せていただく。

こちらは3日前に焙煎されたものらしいが、
確かにアブラの浮きが少ない。

「いい仕事してますねぇ」
なんでも鑑定団のようなセリフを言いそうになったが
ここは直感的に控えておくことにした。

折角なのでと、次はシングルオリジンもいただく。
もちろん、黙っていただく。

その後も気になる豆を次々に淹れていただき、
私の前には沢山のコーヒーカップが並んだ。

「男の精神力は飲んだコーヒーの量に比例する」
これはイギリスの誰かが言った名言らしいが、
今の私には「阿呆の三杯汁」という諺しか似合わない気がする。

流石にトイレが近くなり、
入口にかわいいイラストが描かれた御手洗いをお借りする。

やけに賑やかな音がするトイレ。
耳に飛び込んでくるのは、笛や太鼓の祭囃子
壁のあちこちには、神輿や提灯など、祭り風景の写真。

そして手洗いは、巨大なコーヒーカップ。

なんですかコレ!とトイレから出た私に、
「この子、バカが付くほど祭り好きなの 笑」と、
石川さんのお母様。
「祭り、好きなんです」と、石川さん。

トイレで個性が爆発している。

天井には祭りで昇天されている方の姿まで貼ってあった。

店内ではその趣向を微塵も見せておられないところが
逆に凄い。席に戻りながらそう思う。

帰り際、沢山のお土産を持たせていただく。
見ると中には、浅草のお祭り「三社祭」にちなんだ
「三社ブレンド」も入れていただいていた。
やっぱり隠しきれないほど、お祭り好きだったよう。

私たちは普段から、この3つがあるお店は
価値のある、長く愛されるお店だと、思っている。

それらが、こちらのお店、
石川コーヒー㈱&リバーストーンには、すべて揃っている。

家業と修行、
鬼のダブルワークの26年間で培ってこられた知識と経験、
お世話になった恩師への感謝の気持ち、
石川さんが淹れる一杯のコーヒーには、
とても多くのものが詰まっている。

上野や浅草界隈にお出かけの際には
一度こちらに足を運んでみられてはいかがだろうか。

きっと素敵な1杯が、貴方を待っている。

写真・文責:東京支社/ラボセンター 高島
(ダイイチデンシ株式会社)
2022年12月掲載