カウンター席の壁に描かれた、一大アート作品。
なかなか抜かれない、度肝をいきなり抜かれてしまった。
あまりのクオリティの高さに、どうされたのかお聞きすると、
帰省されていた京都の芸大の学生さんが、
冬休みを利用して、ずっとペインティングしてくれたそう。
壁紙では出ない、その迫力。
居心地のよい、非日常がそこにある。
サードウェーブコーヒーが一大ブームになった昨今、
東京のオシャレな街では、
アメリカのポートランドにあるようなトレンドのお店が増えた。
しかし、ここには、そんなどこかで見たようなトレンドでなく、
本物の贅沢な空間がある。
「テラス席は、また夏休みに書きにくる!」と、
その気鋭のアーティストは、京都に帰っていったという。
さて、こちらに初めて訪れたのは、開店前。
その時は、この壁画にただ度肝を抜かれたが、
開店後に再訪したそれは、
お店と完全に調和されていた。
佐古という、閑静な住宅街にある古民家を改装されたお店は
「テラスカフェランプ」という。
カフェテラス席もあり、そしてランプ。店名のままの空間。
暖かい日には、ゆったりコーヒーを楽しむには最高の場所。
二階席はもっとゆったり、
お子様連れのママ友さんたちでも安心してゆっくりできる、
そんな空間。
「オープンされて、どうですか?
ちょっと落ち着かれましたか?」と
オーナーの須見さんにお聞きした。
「なかなか毎日、大変なんです、昼前から小競り合いがあって、
ランチタイムから夕方まではもう戦場みたいな…。
徳島ってこんなに人がいたんですね、ってくらいで。
本当にありがたいことですけど、
なんとかご迷惑かけないよう、大変です。」
オープンされて一カ月、
知る人ぞ知るぐらいの頃かと思ってお伺いしたら、
もう徳島市内にその存在を知られておられるようだ。
確かにこんなお店は、どこにもみたことはない。
誰かに言いたくなるか、秘密にしたくなるかのどちらか。
焙煎したてのコーヒーの味も抜群。
モーニングでいただいた薬膳粥も、
オーナーのお母様がプロで扱われているということで、
最高のお味。
佐賀でも感じたことだが、ちょっと地方の方が、
人と人との繋がりが深くあり、素晴らしい組み合わせの、
オリジナルなお店になるのかもしれない。
アメリカのポートランドをただ真似して作っただけの店は、
投資を回収し、ブームやトレンドとともに
無くなる。
あとにはまた次のブームの店ができる。サイクルの早い、東京。
しかし、コーヒーを突然嫌いになる人なんていない。
そして、私たちも長く愛される焙煎機をつくり続けたい。
だから、長く続く文化に昇華される空間であってほしい。
そんなお店にこそ、当社の焙煎機があれば、とても嬉しい。
「実は、オープン時には、慣れないために色々とドタバタして、
お待たせしてしまうこともいっぱいあったんです」とは、
スタッフの方。
本日は3名体制で、テキパキと、
来たるランチタイムに向けてご接客されながら、
仕込みもされているが、
確かに最初はオペレーションにご苦労されただろう。
「でも徳島の方って優しい方が多いんですよ。
まだ一度もお叱りいただいたことはないんです。
かなりお待たせしてしまった時なんかも」
車で京都から来た時には、徳島に入った瞬間に、
道を譲ってくれるドライバーさんが増えたのだが、
それまでの関西エリアでは、道を譲ると、
自分の後ろの車にクラクションを鳴らされたことも
恥ずかしながら、ある。
コーヒーは、心が豊かな人が飲む、
実はそんな飲み物のように思う。
ひとりあたりの統計によると、
北欧の人たちが、一番飲むのは決して偶然ではない。
しかし同時に、心を豊かにするものでもある。
ささくれ立った心がひととき落ち着くような。
それが日本中、世界中に広まれば、
不毛な紛争もなくなるかもしれない。
コーヒーブームが、コーヒー文化になる、そんな時。
素材にこだわった、焙煎したてのコーヒー、優しいおもてなし。
そんな文化がここで根付いて行くことを感じる。
それはとても価値のあること。
そこに住む方の日常が、ずっと豊かになる、
そんな空間を作られる方は、きっとお金儲けだけではできない。
素晴らしいご職業だと改めて感じる。
徳島に来られたら是非、そんな素晴らしい空間を
体感してほしい。
特に
天気が良い日は、ランプが眩しい、テラス席で。
文責・撮影 中小路(ダイイチデンシ株式会社)
2017年4月掲載