2019年秋。思い返せば楽しい納品だった。
大阪、下町の街並みの中、
しかし、異国の街にまぎれこんだような。

今は気軽に海外には行けなくなった、2020年夏。
しかし現在でも、異国の息吹を感じることができる場所。

そこは日本最大級の外国人就労支援施設「YOLO BASE」。
日本と海外がつながる新しい場所として2019年9月27日にOPENされた。

「外国人就労支援施設」というと、
昭和の役場のような、ちょっとお堅いグレイな建物を想像されるかもしれない。



全然違う。


ポップカルチャーがおもちゃ箱のようにつめこまれた、
パンチの効いたアーティストの作品群に彩られた、
オシャレかつダイナミックな空間。




その存在を知ったのは昨年、2019年夏。

YOLO BASEにあるカフェレストランで、
その運営をされている中央フードサービス株式会社さんに、
弊社製「NOVO MARKⅡ」を導入いただいたことがきっかけだ。

YOLO BASE内には「YOLO JAPAN」さんという会社が運営される、
外国人就労支援施設、コワーキングスペース、
イベントなどが行えるレンタルスペースに加えて、
「YOLO HOTEL MUSEUM」という別会社さん運営の宿泊・テレワーク施設、
そして中央フードサービスさん運営のカフェレストランがある。

それぞれのプロフェッショナルが、同じビジョンで、
時にはシナジーを生み出しながら独特の世界観で融合。

軸となるYOLO JAPANさんは、
特定技能資格に対応した正社員やアルバイトの求人紹介など、
様々な会員向けサービスを提供してされており、
その会員数は昨年OPEN時で、なんと225の国および地域、12万人以上とのこと。

とてもグローバルだ。

OPEN時のセレモニーでは、大阪副市長、浪速区長などの要職の方がこられ、
様々な媒体で取り上げられ、話題のスポットになられた。

特に話題となったのは、その場所とのギャップも大きいだろう。

大阪で最も濃い印象が強い、
新今宮駅スグ、徒歩5分。

西成区。じゃりン子チエ発祥の地。(他にもいろいろあるが割愛)

「西成」というドがつくほどのローカルのイメージとは真逆。
ドローカルの中に、グローバル。

NOVOをご導入いただいた時、
中央フードサービスのプロジェクトリーダーのSさんは言われた。

「西成のイメージがグローバルに変わる、そんな注目の施設になるでしょう。」

日雇い労働者向けの安い宿泊施設が多い地域に、
近年、安く済ませたい外国人の旅行者等が多く集まってきているとは聞いていた。

そこに「YOLO BASE」がそこのフラグシップとなるような施設・サービスで入り込む。

他にも、星野リゾートが周囲の開発中と、
まさにダイナミックな変化が始まっている。

中央フードレストランさんは、関西を舞台に、
「うおまんグループ」を中心に
様々な飲食にまつわる店舗運営をされており、多くのノウハウを培ってこられた。

2000年頃、私が前職の広告代理店にいたとき、
よく仕事をさぼっていた西梅田のカフェ「Enchante」も、
中央フードレストランさんの経営。

サボるときはこそこそせずに、ダイナミックにさぼるというのが私の鉄則だ。

オシャレなカフェレストランなら、
誰かに見られたた時でも、ノート広げてキャッチコピーでも考えるふりをしてたなら、
もうそれはいけてる広告マンの昼下がり。
これがヴェローチェやドトールでは、ただのリーマン…話がものすごくずれた。時を戻そう。

思い返せば、楽しい納品だった。

弊社製NOVOの納品の際は、大体30分あれば、設置と試運転が終わる。

「じゃあもう終わりましたんで」と説明書と請求書を渡して
そそくさと帰るようでは、ド素人の焙煎機屋。
もしくは、ノルマに追われるただのリーマン。

NOVOの一番の売りは、素人の方でも安心して使っていただけること。

このあと、実際に使われるスタッフさんに使い方のレクチャーをさせていただき、
日々安心して使っていただくためのサポート、つまりこれからが本番だ。

というのも、ものすごく簡単な操作と知っているのは、
購入前に来られた決裁権のある偉い人、リーダーの方か、オーナーさんだけのことが多く、
実際に使うスタッフの方は何も知られていない。

ご一緒に手順をおさらいをすることが肝要と、
マシンに慣れていただく時間を、30分-60分ほど取らせていただく。

事前に担当のSさんにお聞きすると、
店舗スタッフさんは、「YOLO BASE」さんにてご応募があった海外の方のみ。
国もバラバラ、ご説明も英語になる、
いつもよりは手がかかる納品になることを覚悟していた。

レクチャーを開始すると、すごい熱意で、説明を聞かれだす。

通常、日本人だけの時は、元気なのはオーナーさんやリーダーだけ、
他の方は、誰か聞いてるだろうとどこか他人事、というときもしばしば、
だが、こちらでは、みなさん、ワイワイと楽しそう。

この業務は自分事、自分のマシンだと、そんな意識が伝わってきた。

焙煎が始めると、わお!と、
こんなマシンを買ったウチってすごいな、とも言っていただく。
嬉しいリアクション。

何度か焙煎するのを、スタッフの方に順にやっていただく中、
ものすごく皆さんが優秀なことに気づいた。
フランス、ヴェトナム、韓国、USA…
様々な国から、日本に住んで働くという意思をもって来られたのだから、当然かもしれない。

飲食店はなかなかスタッフさんが集まりにくいともいわれる中、
中央フードサービスさんは、外国の優秀な方とここで出会い、
慣れた人には、他の店舗にも行ってもらいますと、彼らに大きな期待をされている。

そんな方に説明するのはとても楽しいひとときだ。

西梅田のオシャレカフェでさぼりまくっていた20代を送った筆者も、
のせられて、とても楽しい納品になる。

操作レクチャーが終わると、日々の清掃のご案内。
本来、代表者一人で、5分あれば終わるターンだが、
全員が自分もやりたいということで、こちらもひとりずつ実演していただく。

物凄いスピードで、正確に、あっという間に終わらせるヴェトナムの女性に、
フランスの男性が、トレビアンとひとこと。

その間、いつの間にかレクチャーで焙煎したコーヒーは、
Sさんの許可を得て、自動のドリップマシンでサーブしていただいた。

納品後に、みなさんで飲むコーヒーの味はとても格別だ。
幸せな焙煎したての香りの中、
こちらが特別な場所になっていくことを感じた。
そしてそんな、記念撮影を。




さて、2020年初春、
ご訪問した「YOLO BASE」さんはコロナ禍の中。

OPENから順調に知名度も増えられ、人気のカフェレストランとなられていたが、
やはりコロナ禍の影響で、
訪日外国人の数はゼロに近い状態の苦しい中、
中央フードサービスのKさんに取材させていただき、
近況を教えていただいた。

外国人の方はいまだに半分以上来られるようで、
珈琲で褒められることも多いと、嬉しいお声をいただいた。

また日本人のお客さん、近所の地元の方も、
珈琲を目当てに来ていただくかたもおられるとのお話。
単なる外国人の就労施設ではないところが大きいだろう。

スタッフの方ももちろん、外国人の方中心。

言葉が通じる日本人よりも物凄く気が利く、
気持ちが通じるメンバーが多いとは飲食業ベテランのKさんのお話。

「日本人がおもてなし、古くは滅私奉公なんていって、
 仲間や、お客様のために頑張ろうなんていう時代はもうなくなりましたね」

と少し寂しそうにされた。

「全自動でできるNOVOもおかげで良い働きです」と太鼓判をいただいた。
時代は新しく、変化している。

グローバリゼーションの限界、終焉ともいわれる近年。

アメリカファーストを掲げる大統領の登場、
イギリスがEUを離脱し、米中の貿易戦争、香港の変容、
そして今回の新型コロナのパンデミック。
世界はどんどん分断が始まっているように見える。

しかし、誰もひとりでは生きられないように、どこも自国だけでは生きられない。
きっと様々な経験を経て、人々はそう気づくだろう。

「ウチの県さえよければいい」
と、いう知事ばかりでは、世界は回らない。

自分のことだけを考えるのをやめて、また世界はつながりだすだろう。

2020年8月、久しぶりに訪れたYOLO BASEさんでは、
地元アイドルのイベントで、コロナ禍でもソーシャルディスタンスを守り大盛況。

色んな国の人が共働するYOLO BASEさん、
お客さんの層や行われるイベントも様々なことを改めて気づく。

グローバルで、ダイバーシティがあふれる空間、
西成の風景を変えると言われたSさんの顔を思い出す。

世界中の文化がつまって、モザイクのように輝く建物の中、
そこに、弊社のマシンを選んでいただいたことを、改めて幸せに感じる。
これから変化する、新しい時代に選んでいただいたような気がして。

YOLO BASE / 中央フードサービス㈱
文責・撮影 中小路通(ダイイチデンシ株式会社)
2020年8月掲載