「ここら辺りは『小嵐山』というんですよ、
京都の渡月橋からの景色と似ているって。」
とはスタッフの方、本当だろうか?
観光客でごった返す京都の嵐山とは
似ても似つかぬのは、人通りの無さ。
今回、NOVOを導入いただいたのは、
福岡県の小倉市の「嵐山茶寮」というお店。
小倉からはモノレールに乗って、
守桓駅から徒歩15分ほど、
のんびりした場所だ。
京都で、いろんなお店を展開されているオーナーさんが、
NOVOを福岡キャナルシティの無印良品で見られて、
これは面白い、とヒントを得られたのが始まり。
そして、こちらで居抜きの喫茶店の物件を取得されて、
新しくコーヒー店を開業された。
小倉の嵐山は、紫川沿いに、
レトロかつおしゃれな建物の中にあった。
もしかしたら、観光客が殺到する前の嵐山は
こうだったのかも。
入ると、とても落ち着く空間。
居抜きの物件をうまく使われて、
まるで何年もある老舗のよう。
そこに、まず出迎える最新の焙煎機が、うまくマッチしている。
まるで、
ハイテク産業と観光産業がうまく織り交ぜられた京都のようだ。
メニューの、コーヒーのページを見ると、
こちらにも新旧が織り混ざっていた。
ブレンド2種はよくある懐かしい喫茶の感じも、
ストレートのチョイスが斬新。
1、キリマンジャロ(タンザニア)
2、アフリカンムーン(ウガンダ)
3、星山(ミャンマー)
4、チョコレート(インド)
ウガンダ、インド、タンザニア、ミャンマー。
その4種のみ。
通常の珈琲屋では、ちょっとないラインナップだろう。
1、ブラジル
2、コロンビア
3、マンデリン(インドネシア)
4、モカ(エチオピア or イエメン)
こんな感じが、よく見るメニュー表だ。
これらのチョイスは見学に来られた時、
そして開店までの間に
数多くのサンプルのやり取りをさせていただき、
一番美味しいと、気に入られた豆たち。
実は全てスペシャルティコーヒーだ。
「アフリカンムーンが一番人気です」とは、店長の三野さん。
隣のスタッフの方もウンウンと頷かれる。
「だって、一番美味しいじゃないですか、
私もうオススメしまくっているんですよ」
ウガンダが一番人気の店なんて、なかなかない。
「私はミャンマーも好きですよ」
「私はブレンドも好きだね」
スタッフの皆さんが自分が思われる、
コーヒーの美味しさの話を口々にされているのを
聞くうち、本来はこうあるべきだと感じた。
実際、
「本日のコーヒー」
「店長オススメ」
と書いてある店はよくある。
しかし、それらは、何を基準にオススメされているのだろうか。
コーヒーは鮮度が命。
実は、廃棄ロスを気にされてのケース。
つまり焙煎して日が経ってきて、
早く売りたいコーヒーであることが多い。
大体の店は、
どこかで焙煎されてきた焙煎豆を購入しているから。
しかし、NOVOを導入いただいたお店では、
スタッフの方が美味しいと思われるものを、
お店で出る分だけ、店内ですぐに焙煎される。
オーダーを受けてから、焙煎されることも。
生豆は大体、半年から1年もつ。
在庫を気にされることなく、鮮度があるのは当たり前。
「美味しい」を基準とされているのである。
「アフリカンムーンとか、ミャンマーみたいな
香りが衝撃な豆、他にないですか?」
とのことで、何個かサンプルをお出しするお約束をし、
そんなコーヒートークを80分ほどした後、
お忙しい中、皆様でお見送りいただいた。
ラインナップとは異なり、
こだわりのマニアックな専門店ではなく、とても暖かい。
私が訪問したのは、オープンされて3週間ほどの頃。
オーナーさんにも、
「産みの苦しみが色々あったのでは?」とお聞きした。
「いえいえ、産みの楽しみしか、ありません。」
「美味しいと心から思えるものを、
お客様にお出しできているからでしょうね。
みんな、本当にワクワクしていますよ。」
お客さんとじっくり向き合って、
美味しいと思えるものをお出しして、
お客さんに喜んでもらえる。
きっとそんな日々は最高である。
嵐山茶寮。
京都が失った、いつかの嵐山がここにある。
文責・撮影:中小路通(ダイイチデンシ株式会社)
2018年1月掲載