店主の中田さんが仰られた。

「この焙煎機、ホント凄いんですよ、
 ちょっと、分かってらっしゃいます?
 いや、きっと分かってねぇんだろうなぁ、
 どれだけ凄いものを作ってるのか、
 作ってる本人さんたちも」

これまでにここまでNOVOを私に推してきた人がいただろうか。
いや、いない、
普通、製造メーカーのスタッフにここまでいう人は
なかなかいない。


これは中野区の北原通り商店街にあるお店、
「MARUTAKE COFFEE BEANS」さんに
久しぶりにお邪魔してきた時の話。

野方駅の近くに位置する北原通り商店街は、
細い路地に入ると昔ながらの看板や建物がそのまま残り、
どこか昭和の雰囲気が漂う
まるでタイムスリップしたかのような感覚を楽しめる場所。

地域の歴史や文化に興味がある人はもちろん、
少しゆったりとした時間が流れ、
都会の喧騒を忘れるにもぴったり。

お店に入ると一組のお客様がおられ、
そのお客様のオーダーなのか、
店主の中田さんはシェーカーをシャカシャカと振っておられる。
とりあえず私はご挨拶しながらパシャっと。

いきなりカメラを向けられても笑顔で目線をくれる中田さん。

「アイスエスプレッソお待たせしました~」と
トレイに載せられたアイスエスプレッソが私の前を通りすぎてゆく。

受け取られたお客様(少しご高齢の女性)はクイッと飲み干し、
「またあとでテイクアウトの物を取りに寄ります」と言われると、
さらりとお店を出て行かれた。

昭和レトロ感のある街並みで、
静かにハンドドリップしている店主と
コーヒー片手に談笑されているお客様、
そんな店内の風景を想像してきたが、
実際にはシャカシャカとシェーカーを振る店主と、
ほぼ一気飲みして出ていかれるお客様…。
(なんかおもてたのとはだいぶちがう)

「今の方、ほぼ毎日来てくださってる方なんです、
 あ、お久しぶりですね、ちょっと雰囲気変わられました?
 お蔭様でなんとか元気にやってますよ」と中田さん。

あ、ご無沙汰しております。ええ、髪を切りました、と私。

こちらの店主、中田さんとの出会いは2021年夏、
渋谷のショールームでご見学いただいたところからはじまる。

ご見学時、中田さんは朗らかな笑顔で
嬉しそうに今後のビジョンを語られていた。

その2ヶ月後には、出店される場所をお決めになり、
焙煎機 NOVO MARKⅡをご契約。
お店は2022年2月にオープンされた。

中田さんのお店、MARUTAKE COFFEE BEANSのこだわりは、
NOVO MARKⅡで焙煎した新鮮なコーヒーはもちろん、
脱炭素化、カーボンニュートラル、SDGsといった
地球環境への配慮。

MARUTAKE COFFEE BEANSさんのHPを見てみると、
「目指すもの」として
・カーボンニュートラルな焙煎への取り組み
・SDGsへ貢献、などが、
商品紹介ページよりも先に掲げられており、
中田さんがガスや炭火ではなく、電気式の焙煎機に拘られたのには
過去には電力会社にお勤めだったという背景がある。

環境に配慮し、地球にも優しい生活を送ること、
それは電力会社でお勤めの頃と変わらず
ご自身で事業をされる上でも絶対に譲れない条件。

商品紹介をやや後回しにしてでも環境について触れているHPは
中田さんの思想がしっかりと表現されている。

「この焙煎機のおかげでやりたかった事が出来ています、
 本当に感謝していますよ。
 元々焙煎には興味があったんですけど、
 環境の事とか考えると、ちょっとひっかかってて。

 ガスとか炭火とかを使ってるお店がダメだとか、
 別にそういう話ではなくて、
 自分がやるのにはちょっと抵抗があったんです。

 でもNOVOなら電気で火を使わないですし、
 ボタンを押せば自動でしっかり焙煎してくれる。
 それも、ガラスで中の豆も見える造りで。

 温度とか細かく設定できてフルオート
 ワンオペでもこれだけの品数に対応できますし
 ほんとNOVOに出会えて良かったですよ」と中田さん。

導入事例に掲載するための様なお言葉をいただいたので
有難くここはノンカットで使わせていただく。

「カーボンニュートラルって知ってます?
 日本では2020年から脱炭素社会の実現を目指す宣言をしているんです、

 暮らしや経済に必要なエネルギーを、
 CO2を排出する石油や石炭、ガスなどの化石燃料から、
 電力に置き換えて温室効果ガスの排出量を減らすって取り組みで、
 「2050年カーボンニュートラル」って言うんですけど、
 環境省のホームページにも出ているので見てみてくださいよ。

 だからこの焙煎機、
 内燃機関を持たないNOVOは、ホント凄いんですよ、
 まさに時代にピッタリなんです!
 ちょっと、分かってらっしゃいます?
 いや、きっと分かってねぇんだろうなぁ、
 どれだけ凄いものを作ってるのか、
 作ってる本人さんたちも…」と中田さん。

突如 相当な熱量の説明を受けリアクションに困りつつ、
また、文章的には所々カットさせていただいたが
非常にNOVOを気に入っていただいているようで嬉しい。

確かにダイイチデンシのHPでは
音や煙が少なく、火事の心配がないオール電化と記載はしているが、
それが環境に良いとはほぼ謳っていない。

NOVO MARKⅡを販売開始した2012年頃は、
節電、省エネなど、環境への意識が高まりだし、
身近なわかりやすいところでは
コンビニの照明がLEDに変わりはじめた頃。

環境に対する世界の意識はこの十年ほどで驚くほど変わり、
ESG(Environmental, Social, and Governance)、
RE100、グリーン経済、サーキュラーエコノミー、
クライメートアクション、ゼロエミッション等、
環境にも目を向けた事業活動を指すワードが一気に広まった。

中でも浸透しているのが
全17個の目標で持続可能な世界へ向けた取り組み「SDGs」。

その7つめの目標では、
「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」と、
化石燃料からの脱却を目指す事が目標となっている。

一昔前にはガスが主流の焙煎を電化したにもかかわらず
ダイイチデンシのHPではそれをウリに書いていないのだから、
これは中田さんに「わかってない」と言われても仕方ない部分。
(次回リニューアル時にはその辺も考慮しようと思う)

そんな中田さんの環境への配慮は焙煎機以外にも。

テイクアウトのカップはもちろん紙製で、
その蓋も紙でできたものにされ、脱プラスチックへの取り組みや、

消臭剤として再利用が可能なチャフ(豆の薄皮)の無料提供や
コーヒー抽出後に出るコーヒーカスの利用を促されたりと
エコロジーな取り組みに力を注いでおられる。

チャフは病院関係者の方が薬品の香り消しになると
よく持ち帰られているとか。

「チャフはハニカム構造になっているので匂いを吸着するんですよ」
と中田さん。

焙煎機をはじめ、そういった細かな取り組みが認められ、
自治体と企業が連携してSDGsの達成に向け歩みを進める制度
「なかのSDGsパートナー」の登録店にもなられている。

と、ここまで環境対策についてばかり取り上げてきたが、
もちろんながら、コーヒーへの熱量も高い。

ズラッと並べられたシングルオリジンをはじめ、
試行錯誤してつくられたオリジナルブレンド3種など、
どれも好評とのこと。

シングルオリジンひとつひとつに付けられた手書きのPOPの中で、
一言「焼きりんご」と書いてあるものにはちょっと笑ってしまった。

っぽい味であっても、決して焼きりんごではない。

オリジナルブレンドは三種あり、
なかでもコロンビアとウガンダをブレンドしたものは
開店当初からのベストセラーらしい。

「コロンビアの豆と相性の良い豆の国って知ってる?
 アフリカがとっても合うんだよー、
 中でもウガンダ、こいつはサイコーだよ」と、
嬉しそうに話す中田さん。

シングルオリジンや、自信作のブレンドは
豆での販売だけでなく、ドリップバッグにもされ、
近くのコーヒースタンド等にも卸されていたり、
じゅん散歩」など、ちょくちょくTVにも取り上げられ
話題にもなっているらしい。

また、コーヒー以外にも、この秋には
「きなこプリンのエスプレッソソース仕立て」という
敷居の高いフレンチレストランで出てきそうな名前のメニューも
リリースの予定だとか。

「コーヒー焙煎 ≒ 地球環境」

サスティナブルなスペシャルティコーヒーを
環境に優しい焙煎機で焙煎し
カーボンニュートラルな未来を目指す中田さん。

そんな中田さんの隣に立つNOVO MARKⅡが
何だかいつもより誇らしく見えた。

写真・文責:東京支社/ラボセンター 高島
(ダイイチデンシ株式会社)
2024年9月掲載