先日、名古屋から京都のショールーム
見学に来られたお客様。

完全な異業種で、
特にご自分が欲しいということではない様子。
しかし何故か、弊社の焙煎機に興味津々といったところ。

お聞きすると、
こんなに画期的な製品が、それほど熟知されていない、
と言うのに、とても興味を持たれたそうだ。

「冷やかしか、帰れ帰れ!」

などという様では、ただのボンクラ社長。
ここは真摯に、通りすがりの方の貴重なご意見、
頂戴しようではないか。

色々お話をしているうちに、

「こういうの、スーパーマーケットに入れたらいいだろうね」
と言われた。

「あ、もう入ってますよ。」

せっかくのアイデアを、
もうあると言われ、ちょっとムッとされた様だ。

「いやでも、名古屋とか東海の辺りではないよ、
 あなたもスーパー1つ1つを営業して回ると、
 1つぐらいは売れると思いますよ」

と先方。なんだかコンサルの方の様だ。

「東海ですと、マルヤスさんがもう導入されてます。」

一つ一つ営業って、押し売りみたいで嫌だなぁ、と思って、
ちょっと早めに言い返してしまった。

「そうか、マルヤス…なるほど、
 あそこに入ったら、もう、勝手に知れ渡るだろうね。」

急におとなしくなられたコンサル風の方を見て、
ザマァと思いながらも、
マルヤスさんへの導入時のことを思い出した。

ご導入いただいたのは半年前。
検討いただいたのは、さらにそれから一年ほど前になる。

最初は、インターネットで弊社サイトを見つけていただき、
お問い合わせいただいた。

そして、高級路線のスーパーマーケットで唯一導入されていた、
阪急オアシス」さんにも見に行かれた様だ。

そしてご招待をした、
スーパーマーケットトレードショーという展示会。

弊社のブースに、先方の社長さんが、
ブランドスーツでバシッと決められ、
幹部の方を6名ぐらいと一緒にこられた。

まるで現代の織田信長が、
名うての家臣団を連れてくる様な感じ。

ご案内する方は、ちょっと怖いかもしれない。
が、実は、こういう方は話が早い。
本当に良いものを見る目が、半端ないからだ。

こだわりの強い社長のご要望に応えて、
デザインオプションも、特別仕様にさせていただき、
導入が決まった。

そして弊社メンバーで納品した後、
オープン前日に、ポップを作ったり、
焙煎機のレクチャーをもう1回して欲しい、
ということで、東京から向かった私は、
ちょっと異様な光景を見ることになる。

スーパー、スーパー、スーパー。

その中央に、今回ご導入いただいた
「マルヤス メルビィ芸濃店」。

津駅からタクシーに乗って向かうと、
その周り一帯は、まるでスーパーマーケットが、
車のディーラーが並んでいる地域の様に、軒を連ねていた。

タクシーの運転手さんは、
「すごい、またスーパーが増えるんやね」と。
超激戦区なのだろう。

お店に着くと、担当のU氏が迎えていただき、
駅からのタクシー代もご馳走してもらった。

「いやー、本当にありがとうございます。」

雰囲気が明るい。
オープン前というので、
皆がピリピリしているのかと思いきや、
ちょっと大学の文化祭の前日みたいな明るさ。

今回は今までよりさらに独自路線のお店をと、
他にない、色々なものを導入された。

弊社の焙煎機もその一つ。
オープン前日、すでにこれは面白い店になる、
そんな期待に満ちた雰囲気があふれていた。

U氏に焙煎機前に案内していただくと、そこには社長の姿。

「誰にでも焙煎できる焙煎機」
というのが強みの焙煎機だが、
何十人とおられるスタッフさんの中で、
まさか社長自ら焙煎しているとは。

なんだか、楽しそうに焙煎をされている。
私の顔を見ると、ニヤリと笑われて、

「これいいね、美味しそうに見えるわ」

と一言。

「いや、見えるだけじゃなくて、
 間違いなく、美味しいですよ。」

と言うと、

「美味しいのは、普通やん。」
 
さすが、いきなり名言である。

美味しそう、飲みたいな、と思ってもらわないと、
美味しいは伝わらない。

熱風が抜ける、立派な排気ダクトもつけられた。
しかし、それは動かしていないと言われる。

何故なら、美味しい香りが漏れるぐらいがちょうどいい、
ということだ。

そして、奥にはUCCさんから入れられたと言う、
超高額なドリップマシン。
美味しい、美味しそうが誰でも提供できるマシン。
徹底されている。

奥には本格派のピザ窯があり、
自家製うどんを作るマシンも。

高級な果物が並ぶ入り口、

ずらり並ぶコーヒー生豆、

そして他の豆類も並ぶ。

カフェは空港にあるカフェテラスの様に、
オープンでくつろげるスペースになっていた。

イオンモールにもない、
ちょっとワクワクできる、
勢いのあるスーパーマーケット。

他の安売りだけの店ともウチは違うと、
スタッフの方も、しっかり理解されている様だ。

その後、ポップを一緒に作成させていただいたり、
「社長だけ使えるでは困るのでは?」とアルバイトの方にも、
焙煎機をレクチャーさせていただいたり、
明るいスタッフの皆さんとオープンに向けて一緒に仕事をさせていただいた。

なんだか楽しい時間。

そんな時間はあっという間に過ぎ、
帰る頃、社長にご挨拶をすると、
「ありがとう、じゃあまた明日な!」と、
冗談なのか、本気なのかわからない一言。

さすがに連日、東京から津までくるのもちょっと厳しいので、
オープンされてから後日に訪問させてもらうことに。

帰り道は、忙しいはずの若いスタッフさんに
津駅まで送っていただくことに。

「どこから来られたんですか?」と聞かれるので、
「あ、東京です」と答えると、

「遠くから嬉しいです、ありがとうございます!」
と最高の笑顔をいただいた。

それは嫌々、忙しいのに
お客さんを送らせられるスタッフの顔ではない。

今は人手不足で時給を上げても人が集まらないなどと、
よく言われるが、ここはどうだろう。

「今回の新店は、マルヤスの新しいブランド名で、
 Mervie(メルビィ)って名前をつけてるんです。」

「他にない新鮮な食材や機材を扱って、
 レストランとスーパーマーケットをMIXした様な感じって、
 社長が想いを込めて、造語ですけど、
 一瞬でブランド名を決められたんですよ。
 ちょっと天才入ってるんで、ウチの社長。」

すごい。
私もこんなことを言われる社長になってみたいものだ。

きっと今の若い人は、
時間をお金に交換する日々には魅力がなく、
楽しく、時間を忘れて没頭できる舞台が欲しいはず。
それがここにある。

駅に着くと、そのスタッフさんは、社長と同じことを言われた。

「じゃあ明日も、お待ちしてます!」

「なんでやねん!」

と、すっかり仲良くならせていただいた私は東京に帰った。

そして、後日OPENされてから再訪。
おかげさまでコーヒーはとても評判で、お店も順調とのこと。
新しい種類の生豆の注文もいただいた。

U氏からは、
さすがに今は社長は焙煎されてないと聞いて訪れたら、
売り場にはまだ、社長がおられた。

喫茶コーナーで今度は接客されている。
フットワークが軽く、とことん現場主義。
だから、現場のスタッフさんも変化について行くのだろう。

勢いのある会社さんに選ばれるのは、格別の思いだ。

「よう来てくれたな、次の新店でも頼むで」

とは社長さん。

「はい。新店は、いつぐらいですか?」

「今年の冬やね」

「は、はぃぃ!」

と今までイチの返事をしてしまった。
まだまだ、私などは、カリスマ社長の手の内の様である。

取材・文責 中小路通(ダイイチデンシ株式会社)
2018年10月掲載