福岡。博多の南、大野城市には、
コーヒーロースターの世界チャンピオンのお店がある。

他にも博多近郊ではロースタリーの銘店がずらり。
今や焙煎士さん、ロースターの激戦区だと聞いた。

そう教えていただいたのは、
そんな博多からは少し離れた地方で、
コーヒー店を開業されようとされている方。

その地にはまだコーヒーロースターが無く、
そこに商機を見出されながらも、博多のように、
その地を盛り上げようとされている。

その方は、研究のため、色んな店で焙煎士さんと会い、
ギーセン、プロバット、富士ローヤル、
色んな焙煎機を見られては、豆を買って吟味されている。

そんな中、NOVO MARKⅡを導入いただいているお店には、
こちらのページをご参照に見学に行かれたそうなのだが、
どうやらそのインパクトは、絶大だったようだ。

「福岡でNOVOのお店、あられるじゃないですか? 
 物凄くリラックスされて、お店やられてたんですよね。 
 他店の焙煎士さんはもう血眼になって、
 豆と向き合われていたのに
 あそこのお店は全くスタンスが違って、
 こちらの話もすごく聞いてもらって、本当に新鮮でした」

福岡近郊でNOVOをお使い頂いているお店も増えてきたが、
思い当たるのはひとつしかない。

そのお店は、ロータスロースターズさん。

私が、最初にお伺いした時はまだ、開業される前。
NOVOの導入を決めていただいて、コーヒーとコーヒー豆の専門店をやるのは決められていたが、最終で、お店の名前を悩まれていた。

まだ考えられてない…と言われつつ、
しかし、キーワードはお持ちであった。

「実は、産まれたばかりの娘の名前に『蓮』という字が
 入っているんですけど…
 蓮は英語でロータスだし…
 ロータスって、店名にいれるの、どうですかね?」

私「ロータス…じゃあロータスロースターズっすかねぇ」と
軽いノリで言っていたら、

夏に納品で伺ったときには
「LOTUS ROASTER’S」に決められていた。

次にお伺いした時は、色々ブレンドについて話が盛り上がった。

クリスマスブレンド、ニューイヤーブレンド、
バレンタインブレンド、ホワイトブレンド、さくらブレンド…

こんな季節のブレンドが面白い、とかなんとか。

しばらくされると、
そんな季節に合ったブレンドがどんどん出来ていた

なんというか、フットワークの軽やかな感じ。
こちらのアイデアもドンドン聞いていただける、

貪欲ながらも、柔軟な方。

ブレンドの内容の感性も抜群で、
スペシャルティクラスの豆もブレンドに使われている。

逆に言えば、焙煎士さんの譲れないこだわりや、
固定概念は全く感じない。

面白そうだし、やってみよう
そのフットワークは軽快だ。

そんな店主は、市原隼人似のまだ若いオーナーさん。
奥様と二人三脚で昨年、開業された。
インスタグラムで最もNOVOをあげていただいている、
感性もお若いオーナーさんである。

出されているコーヒーは、ブレンドと、
スペシャルティのシングル。
オーナー自ら毎日、それらのコーヒーを
ハンドドリップして出される、抜群の味。

前述のコーヒー店を巡られた方は言われる。

「軽やかにご提供されたそれが、
 こだわりの強い焙煎店さんよりも美味しいと感じたから、
 本当に驚きです。
 珍しいスペシャルティの豆なのに、あまりアピールされず、
 そんなに高くも取られていない。また、
 ご苦労されている感じもあまりない。
 あのオーナーさん、
 ちょっと他の焙煎士さんとは雰囲気違いますよね。」

とは、率直なご感想だ。

一方で、普段のお客様からはどう思われておられるだろうか?
ちょっとお聞きしてみたところ、
「住宅地なので、ふらっとコーヒーを飲みに来られたり、
 ふらっとコーヒー豆を買いに来られる人も多いです」と
言われる。

世界チャンピオンや、有名な焙煎士さんがこだわった
ちょっとハイエンドの豆ではなく、
日頃、気軽に買える豆が、
実は一番ニーズがあるのではないだろうか。

肩ひじを貼らなくても、
無理せず、毎日でも飲めるもの。
あの兄ちゃんのとこの豆、新鮮やし、
ブレンドも多くあるし、味も最高と、
そんな声が聞こえてくるようだ。

ブレンドの中身の多くは
スペシャルティクラスというのもクールだ。
さらっとされる生豆のセレクトのセンスが抜群だ。

鮮度、素材、焙煎の好みに合わせる。
本当に最高のことをされていると思いますよ、と
私は自然に言ってしまう。

「でもそれは、
 良い生豆を5kg単位で、安く仕入れさせてもらってるから。
 本当、いつもありがとうございます」

と、嬉しいお言葉もいただける。

それほど多く話される方ではないだけに、
ふと、そんなお気持ちをいただけるだけで最高だ。

私もそういう日頃の感謝が、
自然に言えるようになりたいものだ。

先日、ロータスロースターズさんからLINEで
「この前、この焙煎機を買いたそうな方が、
 ウチに来られましたよ。
 本当、いいマシンなんで、絶対、買われますよ」と、
 メッセージが来た。

そして、その翌日、前述の方より
「契約をしたい」と、嬉しいお言葉をいただいた。

恐らく、営業されながら、
その方にマシンのプッシュもいただいたのだろう。
導入店舗さまによるプッシュは、
我々には真似出来ない説得力がある。
そこにはもう 感謝しかない。

福岡近郊は今、コーヒーとロースタリーカフェが熱い。
世界一の焙煎士さんもおられる、激戦区。

しかし、そんな地域におられながら、なんと自然体であろう。

少し離れているとは言え、
同じ九州でライバルになるかもしれない開業希望の方に、
その肝となる、自動で焙煎できるロースターの良さを
アピールいただいてさえいる。

ロータスロースターズさんは自然体が、半端ない。

まるで台風の目のように、無風。
激戦区に花咲いた、マイペースな、
最高にハートフルなロースターさん。

他にライバルがひしめく地域であっても、
一つでも、他にないものが「圧倒的」であれば、
その店は長く続き、愛されると思う。

恐らく、地元で一番、お客さんにぴったり寄り添って、
愛されるロースターさんになられるであろう。
空前のコーヒーブームの中も、
地についたファンを持たれているのが一番の強み。

『自分らしくあれ。他の人の席はすでに埋まっているから』
とは、アイルランドの劇作家、オスカーワイルドの名言だ。

いつか、娘さんが少し大きくなられるころは、
店名がついた瞬間に立ち会った、と自慢させていただこう。

ロータスロースターズ…
名は体を表すとは、よく言ったものである。

撮影・文責 中小路 通(ダイイチデンシ株式会社)
2018年5月掲載